スペイン巡礼 フランス人の道 30代ひとり旅

【女性ひとり旅】32日間かけてスペイン巡礼フランス人の道を歩き、マドリッドで「暮らすように旅をする。」を実践。質問あれば、お気軽にどうぞ!

【28日目】スペイン巡礼 〜Portomarin

カミーノ・デ・サンティアゴ

2017/07/01

スペイン巡礼28日目

 
朝もやの中、出発する。すっきりとした天気ではないが、残り100kmということもあってか足取りは軽い。しばらくは牧場のような草原を歩き、また森の中に入る。牛が巡礼路をのっそりのっそりと歩いていたりして、刺激しないように歩く。もちろん牛の歩いたあとは、まだ湯気が出ていそうなほやほやのうんちが落ちていたりする。どおりで臭うわけだ。出発した頃の、緑の多かった巡礼路を思い出す。もう一ヶ月近く前のことなんだ。
 
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 サリアを越してからは、それほど山深いところはなく、民家を身近に感じながら歩くことになる。道で出会う巡礼者たちも増えてきて、サリアからスタートした人たちもいるのか、みんな元気がある。
 
途中のFerreriosという村のAlbergue兼カフェで朝食をいただく。亭主もとても親切で、雰囲気のよいカフェだった。内装も可愛くて、ここに泊まりたいくらい。
 
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周りを見渡せば、今までに見覚えのある巡礼者ばかりだった。そしてゴールを数日後に控えて、ほんとにみんなテンションが高い。言葉が通じない同士だが、なんだかざわざわと言い出し、「どこだ」「そこだ」「あそこだ」と変なテンションで何かを探している。そしてついに、「あそこだーー!!!」と見つけたのが、サンティアゴまで100kmと記された石碑だった。これまでおそらく何千とみてきたホタテマークの石碑だったが、これは特別だ。みんなこぞって写真を撮っている。いったいぜんたいどうやって距離を正確に測っているのか不明だが、やっぱりなんだか嬉しい。
 
もう少し先に数十メートル進むと、99.592kmという絶妙な数字のものもあったので、なんらかの基準で測っているようだ。こうなるとなんだか数字をきざむのが楽しくなってくる。100kmをこえてから、数字の刻みが細かくなり、数百メートルでも進んだ感覚が実感できるようになってきた。
 
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引き続き森の中を歩いていると、納屋のような壊れかけの建物の外に色とりどりのホタテが飾られたスーベニアショップがあった。世界各国の国旗や、きれいな模様が描かれている。こういったものも、お土産に買っていったら喜ぶだろうなーと巡礼中はほとんどなかった購買欲が湧いてきた。と同時に、もうすぐ帰るんだなという実感もわいてきた。
 
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森を抜けると、車道に出た。遠くに湖が見える。今夜の目的地、Portomarineの町だ。
 
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巡礼を終えたひとたちが皆、Portomarinの町の美しさについて思い出を語る。巡礼中に出会った日本人のA子さんも、すばらしい町だと絶賛していたので楽しみにしていた。湖のほとりの、まるで絵本に出てくるような町、というイメージが膨らんでいた。そして、イメージが現実になった。
 
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湖にかかる大きな橋が、対岸のPortomarinの町につながっている。久しぶりに青い空に、太陽の光を見た。湖面が光でキラキラとかが来て、周りの森の緑がよりいっそうきれいに見えた。本当にすばらしい景色。
 
対岸に渡ると、突然石の階段が現れる。町に直接つながる、巡礼者用のゲートのようだ。疲れた足に最後のトドメだが、もう町はすぐそこだ。登り切ると、さらに美しい景色に出会うことができた。
 
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Portomarinの町は、高台の山の斜面に築かれた町で、町中も坂が多いのが特徴だ。その分、高台の宿を目指せば眺めもいい。通りには白壁の美しい建物が並び、空の青とのコントラストが本当に一枚の絵のような町並みだった。お洒落なレストランでは美味しい魚料理も楽しめるようだ。通りを抜け、大きな広場に出た。広場の真ん中には、教会がある。巡礼者の壁画もあり、町中が巡礼者に対して優しい印象だ。
 
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たまたま顔見知りの巡礼者にあったので、一緒にAlbergueを探すことにした。彼はスマホでAlbergueの口コミサイトを閲覧し、オスピタリオ(管理人)の女性がとても親切だということで坂の上の方の通りにあった小さなAlbergueを選んだ。小さなキッチンとダイニングがあるだけのなんの変哲もない小さな宿だが、この町の宿は常に学生旅行や団体グループの”巡礼旅行者”が多く、大きめの宿を選ぶととても騒々しい夜を過ごすことになると教えてもらった。確かに。ここは小さめの宿を選んで正解だったかもしれない。
 
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わたしがスーパーに買い出しにいって戻ってくると、同じ宿の巡礼者がなんと表で青空ヘアサロンを開店中だった。バリカンを持ち歩く巡礼者なんて、珍しいのではないか。女性がヘアアイロンを持ち歩くようなものだ。彼はこうやって定期的に頭の毛を刈っているそうだ。でもなぜ、ヒゲはのばすのだろう?
 
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午後は暇だったので、Portomarinの町を散策することにした。こんなに晴れた日は本当にひさしぶり。気持ちよかった。湖のほとりに、大きなプールがあった。湖よりも明るい青が眩しい。小学生くらいの子供たちがたくさん遊んでいた。公共のプールなのだろうか?しばらく芝生でごろんと寝転がって、のんびりお昼寝をする。他の巡礼者も何人かがくつろいでいる。いっぱい太陽の光を浴びて、明日へのエネルギーをチャージした。さぁ、あと数日でサンティアゴだ。1日1日を大切に、歩いていこう。
 
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【27日目】スペイン巡礼 〜Vilei

カミーノ・デ・サンティアゴ

2017/06/30

スペイン巡礼27日目

 
そしてまたもや雨だった。もう何日も青空を見ていない気がする。疲れと、やる気のなさで身体が重い。完全にワクワクする気持ちの糸が切れて、早く巡礼なんか終えてしまいたいという面倒臭さに似た後ろ向きな気持ちでいっぱいだった。
 
何日目かの生乾きの服を着て、濡れたままの靴を履いて宿を出る。霧のような小雨が降っている。山の中のぬかるんだ道をゆく。舗装されていないので、歩くたびに泥に靴が沈む。水たまりをさけつつも、落ち葉がふがふがとした泥道で結局靴は汚れるのだ。せめてこれ以上の浸水だけはさけたい。
 
1時間ほど山の中を歩いていると、湧き水を見つけた。雨が降る中、レインコートの袖口に気をつけながら手ですくって飲んでみた。うまい。けど、雨が降っていなければ、もっと味わえただろうに。なんでも後ろ向き。
 
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山道を抜けて車道に出ると、牧場があった。雨の中、牛たちが草を食んでいる。心なしか、表情も悲しそうだ。
 
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また山道に入った。時々、「カフェまで⚪︎⚪︎km!!」とスペイン語で書かれた看板が、無造作さに置かれていた。次のカフェに入ろうかと思ったが、巡礼路から少し外れていたので諦める。とにかく、この雨の中、寄り道のために距離を歩くのはごめんだ。
 
さらに進むと民家が現れた。お世辞にも、キレイとはいえない、壊れかけた大きな屋敷だった。塀で覆われていて、小さな木製のドアが開いていた。中を覗くと、民族衣装のような明るい柄のテーブルクロスがかけられた台の上に、果物やジュースが並べられているではないか!木片に、”DONATOVO”(寄付)と書かれている。奥にはボロボロのソファーがあり、穀物を入れるのに使われる麻の布がかけられている。ソファーテーブル、いや、木箱の上にはコーヒーも用意されていた。よく見ると、そこは壊れかけた納屋の中だった。
 
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だれもいないようだが、足元に気配を感じた。何かがぴょこんと跳ねて、鉄製のゴミ箱の後ろに隠れた。じっとみていると、小さな子猫が飛び出してきた。それも一匹ではない、全部で三匹もいた。蚊の泣くような声で「にゃーにゃー」とみんな戯れて遊んでいた。
 
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すると母屋の方から、男性がゆっくりと歩いて出てきた。不審者だと思われないように”Hola”と笑顔で話しかけた。向こうも、”Hola”と返事をした。とても物腰が柔らかく、静かな雰囲気をまとった若い男性だった。聞くと、ここで農家をしながら、巡礼者たちに食べ物やお茶を提供して支援しているらしい。私にも熱いコーヒーをわざわざ入れ直してきてくれた。「どうぞ、座ってまってて」と言われたが、どうみてもノミがいそうなソファーに座る気持ちになれない。ので、猫と遊ぶフリをして回避した。
 
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巡礼途中にはこういった寄付で食べ物や飲み物を提供してくれているところがいくつもあった。一本道のど真ん中に無人のワゴンが置かれていたり、坂を登りきったところにパラソルを開いて冷たい飲み物を提供している陽気なおじさんなど、形はさまざま。でもこんな塀で囲まれた別世界のようなところは初めてだった。なんだか狐につままれたみたい。
 
やっと森を抜け、農村地帯へ突入した。大きな敷地を構えた農家の家々が点在していた。敷地を簡易的に囲った石垣の横を通ったりして、だんだんと町に近づいてきた感じがした。
 
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そしてついに、”SARRIA”の看板を発見した。サンティアゴまで100km地点の村だ。やっとここまできた!100km以上歩くと巡礼証明書が発行されるということで、ここサリアの町から歩き始める人も多いと聞いていた。多くの人が歩くということは、宿も争奪戦になるということだ。早く今夜の宿を見つけなければ。
 
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サリアの町は思っていたよりも、あっさりとした町だった。確かに町も大きいし、宿も多かったが、特に見るものがない。バルでハンバーガーと白ワインで簡単にランチを済ませ、次の町へ出発した。
 
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大きな川を渡り、線路を渡り、小さな森を抜け、サリアから2,3kmでVileiという小さな集落についた。集落の入り口にまるでリゾートホテルのようなキレイなAlbergueがあった。ここにしようかな、と迷いつつ、次のBarbadeloという集落には公営のAlbergueがあるので、そちらを目指すことにした。数百メートル進むと、すぐにBarbadeloの集落についた。小さな古い教会と、すぐそばに公営のAlbergueがあった。ドアの前まで行ったが、カーテンが閉まっていて、だれもいなかった。オープンの時間も書いていない。なんだかとってもテンションが下がってしまい、もう一つの私営のAlbergueに行ってみた。ドアを叩いたが、なんとこちらも留守のようだった。さらにテンションが下がった。Bardadeloの次の村は、なんと10km以上先だった。小雨の降る中、もう泣きそうだ。
 
仕方がないので、来た道を引き返すことにした。トボトボと歩いて、先ほど通過したリゾートホテルのようなVileiのAlbergueに泊まることにした。受付は併設するレストランのフロントにあって、内装も素敵な雰囲気だった。うん、ここにして良かった!すこし元気になった。通された部屋もコテージのような別棟で、二段ベッドもしっかりとした作りだった。建物自体が新しく作られたようで、内装もシャワールームもとってもキレイ!
 
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ラベンダーがキレイに植えられた大きな芝生の庭と、噴水なんかもあった。庭の先のビニールハウスに、洗濯用のシンクと物干しがあった。まだまだ雲いきも怪しいが、小雨が上がったので、とりあえず濡れた服を干してみた。
 
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夜はすこし贅沢をして、併設したレストランで久しぶりにピルグリムメニューをいただくことにした。時々一緒に歩いていたアメリカ人の陽気な親子と、ポーカーで生計を立てる北欧の女性がたまたまレストランに入ってきたので、一緒にいただくことにした。サラダに、ミートスパゲティーに、赤ワイン。なんと赤ワインは一人一本ずつ出てきた。もう笑えてくる。みんなで乾杯して、残り少ない巡礼話に花をさかせた。聞くと、なんと3人は、BarbadeloのAlbergueに泊まっているらしい!午後3時くらいに行ったら、普通に受付できたようで、きっと私が早すぎて管理人さんが留守だったのかも。運が悪い。でも、Barbadeloには商店もレストランも一切なく、宿には夕食がついていないので、なんとここVileiまで夕食を食べに戻ってきたらしい。結局、往復する運命だったのか。さらに笑えてくる。
 
 お酒も入ってか、すごく楽しい夜だった。こんな会話がずっと続けばいいのに、と惜しくなるくらい。今日の偶然の再会に感謝して、それぞれの宿へ戻っていった。
 

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【26日目】スペイン巡礼 〜Triacastela

カミーノ・デ・サンティアゴ

2017/06/29

スペイン巡礼26日目

 
雨の音で目を覚ます。あたりはすでにぼんやりと明るくなっていた。気持ちが上がらない中、乾ききっていない服に着替えて、濡れた冷たい靴を履いて、宿を出た。目の前には、どんよりとした空の下に、晴れていたらすばらしく美しかったであろう山々が雲海の中に広がっている。
 
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山のてっぺんのはずなのに、巡礼路はまだ上り坂だ。鬱蒼とした茂みの中に小道が続いている。レインコートから唯一肌を露出している顔に、冷たい雨がぴちぴちと吹き付ける。つらい。
 
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しばらく登ると、今度は下り坂に入った。早くこんな山降りてしまおうと、自然と早足になる。よくブログやパンフレットで見た巡礼者の銅像の横を通り過ぎるも、近くにいく気力がなく遠目から写真をとった。銅像は少し前かがみで、まるでこんな風雨に吹かれて歩いているようだった。
 
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いくつかの村々を通り過ぎたが、どの村も曇天の中では暗く、少し不気味に見えた。きっと晴れていたら庭先に草花がきれいに咲き、美しい村だったのだろう。
 
もう十分雨に耐えた、というところで、小さな山小屋のバーに入った。こんな山の中腹にもバーがあるなんて、ありがたい。山小屋の中では、ちょうど亭主が暖炉に火をつけているところだった。「さぁ、どうぞ」と優しくカウンターへ席を案内してくれた。カフェコンレチェのダブルサイズを頼んだ。
 
すると他の巡礼者の何人かが入ってきた。この前も一緒に歩いた、ポーカーが趣味の北欧の美しい女性のいるパーティーだ。よくみると彼らは、ゴミ服をに穴を開けて頭と腕を通してレインコートを手作りしていた。それにしてもあまりにも手作りすぎやしないか。髪も服もバックパックもびっしょり濡れていた。ゴミ服を脱ぎ捨てると、店の亭主に「雨がっぱは売っていないか?」と藁にもすがる思いで訪ねていた。こんな人たちがたくさんいるのだろう、亭主は奥から何種類か値段の違うレインコートを出してきた。したは4ユーロから上は10ユーロまで。私から見たらどれも変わらない。私が日本から遥々持ってきたコロンビアのレンコートには敵わない。少しがさばるが、丈夫で柄もきれいで、さすが音楽フェスで重宝されているだけはある。
 
散々盛り上がったあと、ワインのボトルを開け始めた彼らを置いて、バーをあとにする。まだ雨は上がらない。ほぼ山を下りきったところで、おんぼろな家々が立ち並ぶ集落を通過した。久しぶりに、ものすごい臭いがした。家畜を飼っているのか、糞尿が雨に濡れてさらに悪臭を放っている。息を止めて通過する。
 
森が開けて、牧場が現れた。その先に小さな村もある。「今日はここで終わり!!!」そう決めて、早速目の前のレストランに駆け込む。地元のおじいちゃんたちが何人かテーブルにいてランチをしていた。写真のメニューのある定食屋で、わりと感じがいい。ソーセージと豚肉ののったプレートを頼む。ついでに白ワインも!冷たい雨の中、山を下りきったご褒美だ。
 
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食事が終わると、さぁどこに泊まろうか。何人かの巡礼者がレストランの前を通過したのが見えた。今日はきっとみんなこの辺りで泊まるだろう、早く宿を探さないと満室になってしまいそうだ。
 
レストランを出て、もう少し村の中心街に向かった。何人かの巡礼者がウロウロと宿を探している。だいぶ疲れが溜まっていたので、もう一番先に目に入った宿に入った。石造りの可愛らしい作りのAlberugueだ。一階はおしゃれなレストランだった。二階にいくつかベッドがある宿になっていた。掃除が行き届いており、清潔だった。
 
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止むことのない雨の中、特にすることがないので、午後中ベッドの上で過ごした。窓辺に小さなプランターがあり、赤い花が咲いていた。庭の芝生には子供用の錆びれたブランコがあり、長靴を履いた小さな子供2人が傘をさして遊んでいる。ふと、なんだか昔訪れたことのある、イギリスの田舎町コッツウォルズを思い出した。ある意味、この村はスペインの原風景を壊さずに大切に残し続けているのだと、気がついた。カミーノという道も、何百年もの歴史がある景色を残し続けている。観光地化され多少経済が潤っているとはいえ、その努力を続けているスペインの人たちがいるからこそ、世界遺産に登録される価値があるのである。改めて、この道を歩かせていただいていることに感謝したのでした。
 
 

【25日目】スペイン巡礼 〜O Cebreiro

カミーノ・デ・サンティアゴ

2017/06/28

スペイン巡礼25日目

 
朝起きるとまだ雨が降っていた。濡れたまま乾いていないレインコートを羽織り、出発した。未舗装の石畳を下り、昨日散歩した町を抜け、巡礼路に出た。雨はますます強くなる。出発して20分くらいしたところで道に迷った。トンネルと抜け、1km歩いたがホタテマークがない。前を2人の巡礼者が歩いていたため、安心していたが、まんまとみんなで道を間違えたようだ。雨の中、来た道を戻る。そして先ほど通過したT字路でどうやら反対方向に曲がってしまっていたようだ。フードをすっぽりとかぶっていたため、すっかりホタテマークを見落としていた。危ない。
 
あたりが明るくなってくると、少し雨が弱まってきた。山の中の車道沿いをトボトボと歩く。頭上を通る高速道路から、滝のように水が落ちてきていた。濡れないように避けて通る。途中の小さな村の小さなバーで休憩をとった。冷えた身体に暖かいカフェコンレチェが沁みる。野良猫が寄ってきて、朝食のおこぼれをねだるが、ソーリー。今日はクロワッサンを食べていないんだ。残念そうに、他の巡礼者のテーブルにねだりに去っっていった。
 
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また濡れたレインコートを羽織り直し、出発。今日はO Cebreiroという、巡礼の最後の難関の山を登る予定だった。こんな雨の中、ぬかるんだ山道を登ると思うと今から憂鬱だった。しばらくは、山間の静かな村々を通りながら進む。生えている植物が日本と似ていて、まるで日本の山を歩いているみたい。こんな田舎の退屈な村に住んでいる若者はきっと都会に憧れているんだろうなーと、思わず自分の故郷と重ね合わせた。
 
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民家の脇道を通過しようとしたところ、庭の手入れをしているおじさんが、釜でバラの花を1本刈り取り、突然プレゼントしてくれた。予想外の出来事にあっけにとられていると、おじさんはニコっと微笑んでまた庭に戻っていった。
 
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そのうちに大きな道路に出た。トラックや自家用車など、車通りが激しく、すぐそばに寂れたサービスエリアがあった。広いパーキングに数台の車が止まっていて、古びた建物にレストランが数件あった。まるで日本みたい。スペインにもこんな廃れた場所があるんだな。そのまま通過し、いよいよO Cebreiroに近づいてきた。
 
緩やかに上り坂になったが、まだまだ山道とは言えなかった。牧場もあり、馬や羊がいた。Vega de Valcarceという村で、最後の休憩をとる。大きなマグカップに並々と入れられたカフェコンレチェがたったの1ユーロなのに驚いた。村に住む学生だろうか、若い男の子たちがバーの隅に置かれた古びたゲーム機で遊んでいた。まるでタイムスリップしたかのような、ノスタルジックな風景だった。
 
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村を出るといよいよ山道に入った。途中までは車道脇を歩くが、巡礼者用の登山道に突入すると急に景色が一変する。のんびりとしした田舎道で、きれいな小川があったり、山間の段々畑もあった。本当に日本の田舎の景色と似ている。馬の納屋も見かけたが、馬に乗って峠を越えられる運搬サービスもあるようだ。あいにく、みんな馬は出払っているよう。もう、自分の足で登るしかない。
 
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標高700mを越えたあたりから、木々が鬱蒼とした林の中の急な坂道を登る。あたりの木や岩の表面は苔むしていて、きのこも生えている。道には大きさの違うゴロゴロした石が散乱していて、足元が非常に悪い。傾斜もきつく、重心を前に置かないと進めないほど。日のあたりも悪いので、濡れた地面はぬかるみが激しく、最悪の状態。こんな道を30分以上歩いた。何度も何度も、「もう無理」と声に出して言いながら、登った。ぜぇぜぇと息を切らせながら、一歩一歩重い足を前に出しながら進んだ。 
 
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そしてやっと目の前が開けて、小さな民家が現れた。その脇を抜けると、小道に出て、バーの看板が見えた。何も考えずにとりあえず、駆け込み、無意識にビールを一杯オーダー。テーブルに座ると、「やった、、、登りきった」と実感できた。若い女性が何人か働いていて、愛想もいい。まるでビールを運んできてくれる天使だ。周りの巡礼者たちも一仕事終えた感にあふれていて、カフェとケーキを楽しいでいる。でも、難所はまだまだこれから。
 
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もうここに泊まろうかな、と諦めかけるくらい今日を終えた感があったが、峠はまだ先だ。重い重い腰を上げて、道を進む。民家もなくなり、高原のような景色の中に突入した。背の高い木も生えないほど、標高が上がってきたということか。遮るものがないので、風がかなり強い。レインコートがバサバサと揺れてめくれ上がり、意味をなしていない。
 
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目の前には牧場のような草原が広がっており、牛と牛飼いが強風の中放牧していた。山のてっぺんに近づいてきたのか、空もすごく近くに感じる。雲の流れもものすごく早くて、真っ青な空が見えたり、またどんよりとした雲に覆われたり、変化が激しい。
 
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そしてついに、Galicia州に入った。州が山をまたいでいるのか。ナバラ州、リオハ州、レオン州と歩いてきて、ついに最後の州に突入したのだ。おもわず「うおーーーー」と叫んでみた。声はすぐに風にかき消されて消えた。地味に感極まったが、「長かったー、やっとここまで来たーーーー」というのが、峠を越し掛けた私の率直な感想だった。
 
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そして今夜の目的地O cebreiroの頂上の村についた。山の頂上にしては小綺麗な石造りの建物が並び、小さな教会もあった。
 
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昔の住居をそのまま見学できる資料館のようなものもあった。ここでも思うのが、なぜわざわざこんな山のてっぺんの不便な場所に住もうと決心したのか。昔の人の思いと、事情がはかり知れない。  
 
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村の一番隅にあるAlbergueに受付した。ここは100人収容規模の大きな宿で、大部屋に数十台の二段ベッドが並んでいた。ここで初めて体験したのが、完全個室になっていないシャワールームだ。ドアがついていない個室で、まるでプールのシャワーのよう。みんなに裸をみられながらシャワーを浴びるスタイル。銭湯や温泉に慣れている日本人でも最初少し躊躇した。周りの様子をうかがうと、西洋人は得に気にせず普通に浴びていた。
 
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かなり身体が冷えていたので、シャワーの後はしばらくベッドで寝袋にくるまって暖をとった。もちろんエアコンなどはないので、部屋はかなり冷えていた。この宿の難点は、立派なキッチンがあるのに、キッチン用具がまったくないことだ。お湯すら沸かすことができない。おそらく巡礼者の誰かが置いていったとおもわれる、フライパンが一つ引き出しに入っていた。そのフライパンを使い、湯を沸かし、お茶を入れてみた。私は缶詰めとパンとサラミを持参していたので、なんとか空腹をしのげたが、スーパーもなく、バーが一件だけ。みんな同じバーに行くしかないようだ。バーでテイクアウトしたサンドイッチを見せてもらったが、硬いフランスパンにハムが1、2枚挟んであるだけの質素なものだった。そのサンドイッチ1つを夫婦で分け合い、静かなキッチンの隅で黙って食べているのが何とも言えない寂しい風景だった。
 
その夜も激しい雨風が一晩中続いた。晴れていたら山の頂上で見る星空は最高だったろうに。ピレネーといい、オセブレイロといい、私の峠越えは本当に天気に恵まれない。でもその分、すばらしいお祭りや朝焼けを何度もみれてここまで来れたので後悔はしていない。すべては自分に与えられたものだと思って、素直に受け止めて道を進むしかないのだ。
 
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(↑宿からの景色。晴れているように見えるが、冷たい雨が強風に混ざって吹き付けている。)
 

【24日目】スペイン巡礼 〜Villafranca del Bierzo

カミーノ・デ・サンティアゴ

2017/06/27

スペイン巡礼24日目

 
今朝も6時前に出発しようと、いつものように5時半前には起床し、支度をして宿を出た。が、庭の門が開かない。外から鍵がかかっていて、どうしても開かないのだ。改めて庭を見回すと、ベンチで待っている人がいる。門が開かないことを訪ねると、ここの開門が6時半だということだ。すなわち、われわれ巡礼者は飛び立とうにも鉄籠から出られない鳥なのだ。しかたなく、ベンチで30分ほど時間を潰すことにする。こんなことなら、もう少しゆっくり寝ていればよかった。
 
若い男の子二人組みもそうとは知らずに意気揚々と門に向かうが、門が開かないことにイラついている様子。何やら二人で相談したかと思ったら、なんと一人の男の子がバックパックを放り投げた。力が強いのだろう、重いバックパックが宙を舞い、見事に門の外にどさっと落ちた。もう一人の男の子も同じように放り投げ、門の外に落とすことに成功した。今度は何をするかと思えば、二人とも門をよじ登り、軽々と越えて、身軽にジャンプし着地すると、先に落としたバックパックを背負い、何事もなかったかのように出発していった。若いってすばらしい。
 
老いたものはじっとベンチで待ち、6時半少し前に管理人が来て開けてくれた門を抜けて一足遅れて出発した。
 
昨日見学したお城の横を抜け、大きな川を渡ると、大きな学校の敷地内を抜ける。公共施設の中が巡礼路になっているのだ。数日前から一緒に歩いている、北欧から来たグループに会った。その中の一人の女性は、肌が白く、きれいなシルバーブロンドの髪に、大きな青い目をしていた。流行りの黒いスパッツに、明るい派手な色のマウンテンパーカーが似合っている。彼女は、サンティアゴに着いたあとは、そのまま歩いてフィステーラ岬を目指すそうだ。そうか、もうみんな巡礼を終えたあとのことを考えているのか。サンティアゴというゴールを数日後に控え、この度が終わってしまうことが少し寂しく思えた。
 
この美しい北欧の女性は、なんとポーカーが趣味で、カジノでプレイして生計を立てているらしい。今回もポーカーで勝って、こんなに自由にノマドライフを送っているらしい。世の中には本当に面白い生き方をしている人がいる。依存症で無一文になる人もいれば、こうやって魅力的な人生を自分自身で掴み取っている人もいるのだ。人生は自分次第だ。
 
そうこうしているうちに、気がつけばブドウ畑の真ん中を歩いていた。いくつもの森を抜け、小さな村を抜け、どんよりとした空の下をひたすらに歩き続けた。
 
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 はっと顔を上げると、畑の真ん中にぽつんと白い小さな家が建っていた。家のすぐ脇には、風から家を守るために倒れかかるように大きな木が立っている。その切り取った景色が、まるで一枚の絵のように美しかった。幼い頃に見た、ヨーロッパの田舎の風景画を現実に見ているようだった。この小さな家にどんな人が住んでいるのだろうと想像していたものが、目の前に存在していた。今、私は絵画の一部となって、この家の脇道を歩いている。夢と現実があいまいになった気分だ。
 
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途中の町で、古いバーに入ると、遅い朝食にした。カフェコンレチェに、スクランブルエッグとベーコンを頼んだ。もれなく大きくカットされたフランスパンもついてくる。大きくて頑丈そうなカウンターテーブルでは、年老いた男性が新聞を広げ、昼間からビールを飲んでいる。窓際のテーブルには、二人の女性が大きな声でしきりになにか話あっている。そこに店員の女性も加わり、井戸端会議が大詰めを迎えた。食事を終えると、窓の外に雨合羽を来た巡礼者が歩いていくのが見えた。やっぱり、雨が降ってきたのか。
 
外に出ると、雨合羽なしでは歩けないほどに雨が降ってきていた。しぶしぶレインコートを羽織り、出発する。町には小さな教会がたくさんあり、入り口で「見ていきなさい」と管理人が手招いている。ある教会には、まるで観音像かと思うくらい黄金にギラついたマリア像がところ狭しと並んでいるところもあれば、「新しいクレデンシャルを発行してます」と宣伝しているところもあった。もちろん、最後に寄付を求めてくるのだが 。
 
雨で身体が冷え、今日はもう無理だ弱音が出た頃、最初のAlbergueが見えてきた。Villafranca del Bierzoの町の一番端にある公共の宿だ。受付したのは私が1番だった。二階のベッドルームに荷物を置き、濡れた服を屋根のあるベランダに干してはみたものの、乾きそうにない。とにかく暖かいものを身体に入れたくて、1階のキッチンでお湯を沸かし、持っていたベルガモットティーを入れた。やっと落ち着く。宿には誰もおらず、外にはしとしとと冷たい雨が降っていた。
 
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夕方、少し雨が弱まったので、町を見に行った。町に行くまでの石畳が工事中で、砂利がむぎだしになっていて、雨も降っていたので足場がとても悪かった。大きくはないが、小さなレストランやバーもあり、スーパーもあった。中心部に修道院を見つけた。立派な造りで、ここにもAlbergueがあるらしい。こちらに泊まるのもよかったな。
 
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帰りにスポーツバーで大きなハンバーガーと白ワインで夕食にした。メインがパテと目玉焼きというのが何ともいえないが、味はとても美味しかった。この辺りはワインの産地で、地元のワインもとても美味しい。私の他に、自転車で巡礼中の中国人の親子が食事をしていた。おそらく中国人だが、彼らは英語で会話をしていた。きっとお金持ちで、英才教育をしているのだろう。GoogleMapの性能の悪さを英語で話あっている。賢い息子と二人だけの冒険旅ができて、きっと父親は誇らしいのだろう。終始笑みがこぼれていたのだった。
 
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【23日目】スペイン巡礼 〜Ponferrada

カミーノ・デ・サンティアゴ

2017/06/26

スペイン巡礼23日目

 
朝、少し風が強い中出発する。山の頂上に近い宿なので、出発と同時に登り坂だ。昨夜雨が降ったせいか、植物も濡れていて空気もしっとりとしている。
 
曇っているのか星も見えず、あたりは真っ暗だ。草が生い茂って、数メートル先も真っ暗で見えない。少し恐怖を感じた。振り返ると、巡礼者の女性が歩いてきた。彼女も同じことを思っていたようで、しばらく一緒に歩くことにした。私のヘッドライトだけが頼りだ。
 
車道を渡り、巡礼路は車道脇の獣道のような草が生い茂った道に続いていた。こんな山奥にもホタテのマークがしっかりとあるのがすごい。
 
10分ほど歩くと、それが見えてきた。巡礼路の中でも有名なスポット、Cruz de Ferroだ。何百年も前から巡礼者たちが、自宅から持ってきた石を置いていく祈りの場所。一本の柱の周りには、巡礼者たちが置いていった石でこんもりと山になっている。
 
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が、到着したのが朝6時だったため、暗くて何も見えない。ヘッドライドを当てて、なんとか一本柱が立っているのがわかった。近くに行ってみると、石の他にもおもちゃや手紙など、いろいろなものが置かれている。
 
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綺麗な写真を撮りたかったが、断念。これもタイミング。私は昨日快適な宿を選んだのだ。仕方がない。ここにこれたことに感謝してお礼を伝え、その場を後にした。
 
Cruz de Ferroは観光地のようで、近くに自家用車やバスなどが駐車できるスペースもあった。そこからの下りはきれいなコンクリートの車道あり、 巡礼路はその道に沿うように整備されていた。しばらく進むと、道沿いに突然虹色の旗が現れた。そこが例のヒッピープレイスだということが、一目でわかった。
 
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 Manjarinは廃村後にたった一件残ったAlbergueだ。朝が早かったので、まだ人気はなく、中には入れなかったが、建物の前には数カ国の国旗が飾ってあったり、距離が書いてある看板が掲げられている。一番目立つのはやはり、「PEACE」と書かれている虹色の旗だ。確かThe Wayという映画にも出てきたはず。映画の中に出てくるスポット一つ一つを着実に抑えて歩いていることに、なんだか満足感があった。記念撮影をして先を急ぐ。
 
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車道沿いには牧場があり、牛たちが朝霧の中のんびりと朝食の草を食んでいる。近づいて写真を撮っても動じない。車道から巡礼者用の小道に入ると、そこは硬い岩盤の上だった。岩の表面はつるつるとしていて、滑りやすい。気をつけながら山を下ってゆく。ちょうど日の出を迎えるところだった。
 
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薄ピンク色の東の空から、強い光が溢れて、世界が一瞬にして輝きだした。朝露に濡れた草木も生き生きとして目を覚ました。だれもいない山のてっぺんで、人間はわたしたったひとり。太陽のエネルギーを一身に浴びて、身体の奥から目覚める気分だ。まるで蛹から孵るように、ぐんぐんとノビをした。あたりの山々も光が差して、一斉に起き出した。まだ遠くの山には低い位置に雲がかかり、ゆっくりと流れていった。今までも美しい景色の中で朝を迎えてきたけれど、今朝は特別だ。本当に神々しい朝。太陽が登り切ると、もう一度ゆっくりと大きく息を吸って、出発した。
 
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 ここからはものすごい角度の下り坂だった。自分がずいぶんと高い山を登ってきたんだということに、改めて気づかされた。ごろごろと大きな岩が多く、足を滑らせないように慎重に下る。膝に負担がかかっていることは承知だったが、下る以外に道がない。トレイルランのコースになっているのか、時々コースを示す旗が木々にくくりつけてあった。こんな急な坂道を走りながら登ったり、下ったりするなんて信じられない。
 
山の中腹の、Aceboという美しい村についた。ミニチュアのように可愛らしい家々が並ぶ小さな村だ。こんなに高いところに村を作り、昔は物資を運ぶのにきっと大変だっただろう。Manjarinもそうだが、このような不便なところに住居を築く人たちはいったいどんな理由があったんだろうか。思いをはせる。
 
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やっと平坦な道に出ると、何やら遠くからカランカランという乾いた音がする。それも大量に。あたりを見回しても姿は見えず、しかしどんどんと近づいてくる。これは、もしかしたら大所帯なのかもしれない・・・。そして想像していた通りのことが起こった。ガサガサと茂みが動いたと思ったら、羊の大群が道に飛び出してきた。道の真ん中にいたわたしは逃げる暇もなく、羊に囲まれてしまった。これはもう、彼らが全員通りすぎるまでここで待機するしかない。羊たちはわたしの存在を完全に無視し、巡礼路の先に一心不乱に走ってゆく。これだけたくさんの羊がいるんだもの、中には出遅れる羊もいるようで、一番最後にのんびりと歩いてきて、見回りの犬にお尻を突かれて慌てて走り出す羊もいた。そしてこの大所帯の一番最後に羊飼いの男が歩いてきて、「Hola!」とニヤリとしてつぶやいて羊のあとを追っていった。
 
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山を完全に下りきり、小さな小川を超えると、Molinasecaの町に出た。大きな川沿いの美しい町で、観光客向けの新しいホテルやレストランがあった。とても整備されていて、リゾートのようだった。休む間も無く町を出て、目的地のPonferradaの町を目指す。
 
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ここからが長かった。Ponferradaの町までは、完全に車道沿いをゆくことになる。見るものは一切なく、ひたすらに車道をゆく。途中、巡礼路は車道から左に曲がる道へ誘導されるのだが、これがひどく遠回りをさせる完全なるトラップである。車道沿いを行った場合は最短距離で町につくのだが、巡礼路はあえて遠回りをさせているようだ。町から逸れてゆく順路に一瞬不安になり引き返そうと思ったが、最終的に回りに回ってPonferradaの町にたどり着いた。
 
San Nicalas de Flueという大型のAlbergueに泊まった。到着したのは、わたしが2番だった。入り口横の壊れかけの自動販売機でビールを買って、噴水で足を冷やしながら受付開始を待った。このアルベルゲは、大きめのキッチンとダイニング、6人部屋が数十部屋ある一般的な大型のアルベルゲだった。一旦シャワーを浴びて、買い物に出かけた。なんでも揃う大きなスーパーがあり、サラダやハム、ヨーグルトなどを買い込んで宿で食べた。
 
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まだ少し元気があったので、午後は町を散策することにした。土産物屋がたくさんあり、観光案内も充実していた。巡礼割引がきくとのことで、町のシンボルでもあるお城Castillo del los Templariosを見学しに行った。国を象徴するタペストリーが掲げられた大きな門をくぐり、中へ入ると広い中庭があった。建物はすべて石造りで、とても頑丈なイメージ。城壁もしっかりと作られていて、見張り塔には国の旗が風にはためいている。わたしにとっての、中世のお城のイメージそのものだった。
 
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資料館にはお城の歴史を説明する展示や、当時の人たちの使っていた武器の展示があった。見張り塔に登り、町全体を眺めてみる。とてもいい眺め。家々の屋根や、さっき歩いてきた巡礼路が見える。そして今日越えてきた山々も遠くに見えた。観光客は少なく、とても静かだった。夜19時を過ぎ、やっとあたりが夕暮れに近づいていた。心地よい風が吹き、赤と黄色のスペインの国旗がゆらゆらと揺れている。鳥たちも家に帰るころかな。ゆっくりと変わる空を見ながら、随分と遠いところまで来てしまったんだなぁと少しだけ家が恋しくなった。
 
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【22日目】スペイン巡礼 〜Foncebadon

カミーノ・デ・サンティアゴ

2017/06/25

スペイン巡礼22日目

 
まだ暗いうちにAstorgaを出る。町のはずれに大きな教会があった。まだ日の出前の藍色の空をバックに、幻想的に見えた。静まり返って誰もいない通りを歩く。空気が澄んで、凛としていた。気持ちが良い。
 
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町を出ると、建物もまばらになり、一気に田舎道になった。道は山の方に向かって一本道だ。今日はこの山の頂上付近まで行く予定。気合いが入る。
 
いくつかの町を通り過ぎるうちに、いつの間にか夜が開けて、あたりは明るくなっていた。小さな村のバルに入って朝食を食べた。巡礼者で混んでいるが、店員の愛想は悪く、コーヒー以外のパンやクッキーは全てスーパーで売られているものをそのまま出していた。そそくさと食べて、村を出た。
 
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次にたどり着いたのは、El Gansoという村だった。ここも寂しい村で、いくつかの土産物屋があったが、静かで人がいなかった。家々も簡素で、教会さえも鄙びて見えた。
 
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El Gansoを出ると、いよいよ山に向けて何もない一本道になった。虹のかかった十字架がようこそと出迎えてくれている。傾斜もきつくなり、木々も深くなってきた。フェンスには、巡礼者たちがかけたお手製の十字架がところ狭しと掲げられている。
 
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森を抜け、林を抜け、どんどん登ってゆく。あたりが開けると、牧場があり、その先にもっと高い山が見えた。まだゆくのか・・。今日は思ってたよりも大変な道だ。見晴らしのよいバーがあったので、休憩。靴を脱いで、芝生のあるテラスでのんびりビールをいただく。他の巡礼者も通りがかるたびに、吸い込まれるようにこのバーに入ってきた。そしてみんな荷を降ろし、靴を脱いで芝生でくつろいだ。
 
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さぁ、みんなより一足先に出発だ。本格的に山に突入する前の、最後の休憩地点でもあるRabanalの村はとても雰囲気が良かった。可愛らしいレンガ造りの建物が小さな通りに並び、猫がのんびりと歩いていた。町のご婦人も気軽に話しかけてくる。とてもいい村。
 
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村を出ると、乾いた砂利道が続いた。カラカラに乾いた土壌に、硬い葉をつけた植物が水分を逃すまいと必死に生えている。まるでオーストラリアのような風景が遠くまで広がっていた。
 
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 いよいよ急勾配となり、息を切らしながら、ギラギラと照りつける太陽の下を進む。まるで土石流があったんじゃないかと思うくらい、ぐちゃぐちゃに変形した(もちろん舗装されていない)道を息もきれぎれ登ってゆく。途中、ロッククライミングじゃないかと思うくらい、道無き道を足元に気をつけながら登った。
 
やっとのことで登りきり、辺りが開けると、今日の目的地Foncebadonの村についた。山のほぼ一番高いところにある村で見晴らしがよいはずだが、あいにくの曇天で、さらに天気が悪くなりそうな予感がした。村、というよりは山間の集落といった感じで、傾斜に沿って築かれているので、家々を結ぶのも舗装されていない傾斜のきつい道だった。
 
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数件ある家も壊れていたり、ゴミが庭に放置されていたりと、雰囲気はいいとは言えない。次の村に進むか迷った。一件しかない食堂に巡礼者が溜まっていたので、話を聞いてみた。ある男性が、「次のAlbergueのManjarinはヒッピープレイスだよ」という。彼がいうには、男女一緒の雑魚寝スタイルの宿で、ヒッピーがいっぱいいるらしい。悪いタバコでも吸うのかな?それはそれでいいのだが、Manjarinまでは5km以上あるので、今の体力では進む気力がなかった。
 
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この集落に泊まるのは躊躇したが、一番良さそうなAlberugueに様子を見にいってみた。Pasoda del Druidaは高台にある、新しい宿だった。キッチン、ダイニング、シャワールームもきれいで、ベッドも下の段にしてくれるという。よし、ここに決めた。
 
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シャワーをあび、洗濯をして干そうとしたとき、やっぱり雨が降ってきた。無理して先に進まずに、ここでステイしてよかった。ダイニングにはソファーもあり、ゆっくりくつろぐことができたのがよかった。事前に買い込んでいたレンチンできるパエリヤをつまみに、宿でワインを買って飲んだ。
 
 全てはタイミングだな、と改めて思う。進むのも、立ち止まるのも、自分次第。無理をせずに一度立ち止まって、最良の選択ができるようになってきた。自分が望まないシチュエーション(例えばこの集落のような)の中にいても、冷静に考えて最良の選択をすることで、快適に過ごすことができている。そうやって一歩一歩進んでいこう。
 
 こうやって、道を歩くことと、自分の人生を歩むことを重ね合わせて学びになることが度々あった。今日はそのうちの一つ。こうやって経験値が上がっていくのも、ドラクエみたいでカミーノの醍醐味なのである。
 
 

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