スペイン巡礼 フランス人の道 2017

【女性ひとり旅】32日間かけてスペイン巡礼フランス人の道を歩き、マドリッドで「暮らすように旅をする。」を実践。質問あれば、お気軽にどうぞ!

【32日目】スペイン巡礼 〜Santiago de Compostela

カミーノ・デ・サンティアゴ

2017/07/05
スペイン巡礼32日目
 
朝4時に目が醒める。支度をして、キッチンに置いてあった”ご自由に”のドーナッツを2個頬張って出発した。さぁ、今日は巡礼最後の日。いつもと同じ1日の始まりなのに、なんだか胸が高鳴る。
 
辺りは暗かったが、町の通りは街灯を頼りに地図を見ながら進む。まだ車の通りもほとんどなく、町全体が静まり返っていた。町を抜けると昨日一度通った森に入った。本当に真っ暗だった。そうだ、今朝は月が出ていない。今までは月明かりに照らされた植物がうっすらと見えたが、今日に限ってはそれさえもない。風も吹いていないので、葉音もなく、森は静まり返っていた。気味が悪いほどに。大きな木に囲まれた森の中の一本道をゆく。ヘッドライトで照らされる範囲の外は真っ暗で、側に木が立っていることさえも見えない。初めて、森が怖い、と感じた。今まではどんなに朝早く出て山の中を一人で歩いても全くそんなことは感じなかったのに、この異様な静けさの中をたった一人で歩くのが恐ろしかった。そしてその時突然に、道の先に白い光の玉が現れた!!!驚きと恐怖と緊張で、身動きが取れず、全身から汗が噴き出した。
 
そしてその光の玉は、俊敏に上下に動き、ぱっと消えた。「え?!なに?!」混乱と恐怖で、動けなかった。咄嗟に逃げようと、後ろを振り返った。すると、後ろにも遠くに白い玉が見えた。一つではなく、二つだ。「ん???」自分の頭のライトで照らされた先をよーく見ると、あちらも頭にヘッドライトをつけた人間だった。「なーんだ・・・」おそらくさっき見たのも、ヘッドライトをつけた巡礼者だったのだ。かなり遠くを歩いていたので、私のライトでも照らしきれず、向こうの頭のライトだけが見えたのだ。お互いに前だけ向いて歩いているので、気づかないのだ。
 
そんな恐怖体験をしつつ、ものすごい早歩きで進む。山を登るのも猛スピードだ。まるでトレイルラン。山の上には空港があり、滑走路の横を通る。小さな集落もいくつか通りすぎ、徐々に巡礼者たちも増えてきた。今朝は朝ごはんもパスして、ひたすらにサンティアゴを目指す。カフェ、ゴルフ場、郊外の住宅地、学校、教会など、色々通りすぎたが、一瞬も休憩しなかった。
 
そしてついにサンティアゴ手前5km地点の、Monte Gozaの山の頂上にきた。ここには大型のAlbergueがあると聞いていたが、本当に大型だった。いくつもの棟が広大な敷地の山の斜面に建てられていて、まるで収容所のよう。どこが受付なのかもさっぱりわからない。この丘から、サンティアゴの町が遠くに見えた。もう少しだ。
 
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丘を下るといよいよ、車通りの激しい街中に入った。巡礼者たちの置き土産(というかもはやゴミ溜め)で飾られた、”Santiago de Compostela”の巨大看板が出迎えてくれた。ここまで頑張って歩いてきて、いらなくなったカッパをこうやって捨てて汚していくなってどんな失礼な神経をしているんだろうか?と思ってしまうのは、日本人だからだろうか。
 
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街中にもしっかりと「Camino de Santiago」の看板があって、安心する。これで迷うことがない。それにしても、もう少しでこの看板を追い続ける日々が終わる のかと思うと少し寂しい。
 
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旧市街に入るまではわりと近代的な建物が並ぶ。アパートなどの背の高い建物が多いが、そのビル間のちょっとしたスペースで共同菜園などがあり不思議な町である。
 
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そして旧市街に入り、石造りの建物を横目に少し迷いながらも、その建物を目指す。
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そしてついに、Santiago de Compostelaに辿り着いた。
 
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2017年7月5日 9:07a.m. ついに辿り着いた。800kmの道のりを、32日間かけて歩いてきた。
 
 
巡礼を歩いた多くの方が言うように、この場所に辿り着いたことに対する溢れ出るような感動は特にない。なぜならこの歩いてきた道の途中で見てきたこと、経験したこと、考えたことの方があまりにも自分にとっては重要で、十分に心を動かされたからだ。単純にこの場所にたどり着くことが巡礼なのではなく、800kmという道中で自分が何を得るかということが巡礼の本意なのだと改めて思い知った。
 
この広場にたどり着く直前に、巡礼を始めた頃に何度か出会った女の子とすれ違った。ウクレレを持って巡礼をしていて、よく宿で弾いて歌ってくれていたっけ。そんな彼女がカテドラルのある広場から引き返してくるときの表情が今でも忘れられない。帽子を深くかぶって、そこから見えた表情は硬く強張っていた。彼女は800kmを歩いて、何が見えたのかな。どうか、あの歌っていたころの、明るくて楽しい気持ちと笑顔を忘れないでいてほしい。いずれにせよ、何かを得たことは間違いない。巡礼は私たちを手ぶらでは返してくれないのだ。
 
それにしても、カテドラルは見事に青い布でカバーされていた。工事中なのは知っていたが、2、3年前からこの姿で、あと10年くらいは修復に時間がかかるとのこと。なんだか煮え切らないが、仕方がない。巡礼証明書をもらいに行くことにした。
 
 
事前にネットで調べていたので、巡礼オフィスはすぐにわかった。広場を抜け、階段を下りて右に曲がるとすぐだ。巡礼者でごった返していると思いきや、まだ時間が早かったので2、3人が並んでいるだけだった。順番を待ち、カウンターでクレデンシャル(スタンプ帳)を提出すると、受付の女性がさらっとさらっとチェックし(スタート地点と、昨日泊まった宿しかみていない気がする)、巡礼証明書と距離証明書をとても可愛らしいフォントで手書きでこれまたさらっと書いてくれた。受付カウンターの横にはお土産もの屋があり、そこで賞状を入れるような筒が2ユーロで買えるので、それに入れて持ち帰ることにした。
 
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次に向かったのは、大聖堂でのミサだ。 1日に数千人の人たちがここサンティアゴに辿りつくだけあって、数回行われるミサのどの回もものすごい人数だった。席は数百人分用意されているが、開始15分前にはほぼ全ての椅子が埋まり、立っている人も数百人はいただろう。開始前は大聖堂内は薄暗いのだが、ミサが始まると黄金の祭壇に照明が当たり、かなり明るくなる。演台に立つ人が「サイレンシコ(静粛に)」と何度も通達するも、これだけの数の人がいるとなかなか静かにならない。演説はスペイン語と英語で交互に通訳されながら進む。巡礼中に何度もミサを受けたので要領はわかっているが、説教も長いので時間がかかる。どうやって選ばれたのかはわからないが、巡礼者の中から選ばれた数人が前に出て、名前と、どこの国から来たのかと、どこの町から出発したのかを一人ずつ述べていく。最後はお決まりの、周りの席の人たちと握手をして、ここで出会えたことに感謝して終わり。なんてことはない、ただの儀式だ。そう、想像してはいたが、こんな感じであっけなく、サンティアゴの巡礼が終わってしまった。
 
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思えば朝4時過ぎに出発し、朝9時にはサンティアゴに着いた。ということは、4時間ちょっとで20kmを歩いたことになる。今までで最速だ。最後までせっかちだったな。朝ごはんも食べずに来たが、ピルグリムメニューを食べるほどお腹が空いていなかったので、小さなバルに入りスープとクロケッタとビールで休憩した。さて、これからどうしようか。散歩でもしようか。サンティアゴの旧市街は通りも石畳で、建物も古く、中世のヨーロッパの街並みのイメージ。スーベニアショップとレストランが星の数ほどあり、常に通りは賑わっている。大聖堂の目の前の広場には団体の巡礼者の歓声が響き、記念の撮影をしている。少し離れたところで、単独の巡礼者が静かに大聖堂を見上げている。みんなそれぞれの想いを噛み締めているのだと思う。このサンティアゴの街は数百年もの間、毎日新しい巡礼者たちを迎えてきた。来るもの拒まず、そしてこの巡礼を成し遂げた人たちの新しい門出を祝い、新しい人生へと送り出している。
 
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午後3時を回ると、早速ホテルにチェックインをした。巡礼を終えた記念の自分へのご褒美で、今夜はホテルを予約していた。大聖堂のすぐ近くの、五つ星ホテルだ。石造りの外観だが、内装はモダンに改装されていてとても歴史のある建物とは思えないほど。部屋には大きくて広いベッド!そしてここのホテルに決めたのはなんといっても、バスタブがあるからだ。暑いお湯を張り、約一ヶ月ぶりに湯船に浸かることができた。24時間食べ放題の軽食つきで、トーストやフルーツ、コーヒーがいつでも飲めた。
 
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夕食は一人で祝杯を挙げに、バーホッピングに出かけた。どのお店も魅力的で、店先で客引きする店員も親切なのでかなり迷ったが、その中でも外観が素敵で、店内もレトロで雰囲気のあるところを選んだ。カウンターのショウケースに並ぶ、海産物や野菜の料理はどれもこれも美味しそうで、色も鮮やかで照明に照らされてまるで宝石のようだ。欲しいものを選ぶと、その都度温めたり、焼いたりして調理してくれる。食べたことがないくらい弾力のある食感のエビや、パン粉をのせてちょっと焼いた貝がどれもこれも美味しい。接客も丁寧で、本当に気持ちが良い。巡礼を成し遂げた夜に、思い切りスペインらしい観光を楽しんだ。
 
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さぁ、これで私の32日間の巡礼の旅は終わってしまった。次はどこへ向かおうか。まだまだスペインの旅は終わらない。
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【31日目】スペイン巡礼 〜Pedrouzo

カミーノ・デ・サンティアゴ

2017/07/04
スペイン巡礼31日目
 
エアコンの効いた快適な部屋でぐっすり眠り、朝目覚めた。カーテンで仕切られた小さな小部屋に私一人なので、堂々と着替えられる。準備をして宿を出る。つもりが、あれ?ドアの鉄格子が開かない。ショック・・・。ここも、管理人が外から鍵を開けるまで、ドアが開かないようだ。仕方がないので、オープンを待つ。ソファーがいくつもあるので、せっかく履いた靴をまた脱ぎ、くつろいだ。
 
6時過ぎにやっと管理人が来て、ドアを開けてくれた。待ちわびた巡礼者たちが、ぞろぞろと宿を出た。もう日の出が近い時間だ。少し急ぎ足になる。町中の道路沿いをしばらく歩き、家々がまばらになったころ日の出を迎えた。今日も真っ赤な朝日に照らされる。眩しさで少し目がくらみ、また目を開くと一瞬で世界が夜から朝に変わっていた。1日のはじまりだ。
 
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予定では、明日サンティアゴに着く予定だ。サンティアゴから5kmほど手前のMonte Gozoの大型のアルベルゲに泊まる人が多いようだが、さすがに1日ではそこまでは行けそうもないので、20km手前のPedrouzoを目指すことにした。
 
わりと平坦な道に小さな集落がいくつもあり、どの村も丁寧に整えられた庭先が綺麗でイングリッシュガーデンのようだった。(スペインだけど。)プチホテルもあり、こんなところに泊まって、午後はゆっくり庭で本を読むのもいいなぁと想像を膨らませながら歩いた。どの村にもその村の個性があって、眺めているだけでも楽しい。距離に追われることなく、のんびりを歩けるのが幸せだ。カミーノに来た目的も、もともとはスペインの美しい景色や村々を見てみたいというのがあった。それをまた今日も達成しながら歩いてる。
 
(あまりにものんびりと歩き過ぎて、写真がないのが残念。)
 
朝ごはんを食べる場所を探すも、なかなかない。途中、小さな集落にカフェを発見したが、水はけがよくなく、庭も苔むしていたのでスルー。だがここの庭先の石の兵には、無数のビール瓶が並べて、いや、放置されていた。不思議な光景。
 
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やっとまともに朝ごはんを食べられそうなカフェを発見。テラスがあり、テラスの向こうには綺麗に剪定された広い農地が広がっていた。たくさんの巡礼者たちがのんびり朝のカフェタイム。私はお腹がすいていたので、たっぷりお砂糖を入れたカフェコンレチェとポカディージョ(サンドイッチ)を。そういえばスペインに来てから、カフェラテに砂糖を入れるようになった。最初は抵抗があったけど、あまりにも歩き疲れている時は、やっぱり身体が糖分を欲しているようだった。あまいあまーいカフェコンレチェをいただくと、回復するよう。そんなわけで、カフェラテに砂糖を入れる派です。
 
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いよいよ太陽が頭のてっぺんに近づき、歩くのが厳しくなってきた。森を通るルートが多いので比較的日陰があるが、アスファルトの照り返しで体力が奪われ、足も限界だった。そんなとき、顔馴染みの巡礼者たちにあった。ポルトガル人とイギリス人とフランス人のグループだ。しばらく話が盛り上がって歩いていると、なんと目的地の町を通り越し、森を一つ抜けていた。地図を見返すも、次の町が遠すぎたのでしぶしぶ来た道を戻ることに。往復の距離を歩き疲れ果てたので、みんなでちょっと贅沢をして私営のアルベルゲに泊まることにした。選んだお宿は広くて清潔で、そしてなんとお風呂にダブルヘッドシャワーもある!みんなで盛り上がり「サイコー!」と言いながらシャワーを浴びて、ご飯を食べに出かけた。
 
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宿の人にオススメのレストランを聞いて、その店に行くことに。こういうときにスペイン語の話せる人がいると便利だ。評判の店らしく、地元のスペイン人もたくさんランチをしていた。サラダに、ミートボールスパゲティに、ワイン。デザートに初めてガリシアケーキという、少し粉っぽいパウンドケーキもいただいた。昼間から盛り上がりだいぶ飲んだけど、楽しい宴だった。
 
 
みんなで、巡礼を終えてそれぞれの故郷に帰ったら何をするかについて話あった。
 
ポルトガル人の男性は親が弁護士で自分はボンボンだという。親のお金でマンチェスターに留学中で、留学先で出会ったのがイギリス人の友人というわけだ。この友人の若いイギリス人男性は、赤毛で肌が白く独特な目つきをしていて、見るからにマンチェスター出身とわかる。家族に「卒業旅行に、巡礼に行ってくる」と伝えたところ、「日焼け止めを持っていけ」と一言言われたそうだ。ウィットに富んた的確なアドバイス
ふたりともまだ大学生。イギリスに帰ったら大学を卒業するが、とりあえずはまだ何の仕事に就くかは決めていないとのこと。日本だったら卒業する1年以上も前から就活に励むのに、なんとものんびりしたもんだ。
 
もう一人のフランス人の女性は、一人で巡礼に来ていたが途中でこのボーイズに出会い、面白かったので一緒に歩いてきたという。年齢は39歳で、先日Portmarinで誕生日を迎えたそう。彼女も不思議な経歴で、なんとインドに住んでいて、巡礼を終えたらインドの自宅に帰るそうだ。大きな一軒家に友人とふたりで住んで、フリーランスで仕事をしているという。なんとも個性的なメンバー。
 
さて、私はというと、急に巡礼を思い立って会社を辞め、たくさんのブログを読み込んでつけた知識だけを頼りに、バックパック一個でスペインにきた。そして30日間の夢のような冒険を明日終えようとしている。日本に帰った後のことなんて、なんにも考えていない。
 
そんななんの目標もないわたしのために、みんなが今後のプランを考えてくれるという。フランス人の女性に、「あなたはなにが好きなの?」と聞かれ、しばらく考えたあとに、「旅だ」と答えた。すると「じゃあ、トラベルジャーナリストなんてどう?あなたは旅行が好きだし、英語もしゃべれるし、これで決まりね!」と。なんともシンプルなアイディアにあ然としてしまう。「でも、英語だってそんなにしゃべれるわけじゃないし、そんな仕事してる人なんて五万といるし、お金になるかわからないし・・・。」と出来ない理由ばかり並べる私に対し、みんなは「そうだ!それがいいよ!」「旅をしながら、旅雑誌に投稿したらいいじゃない」と本気だ。
 
他人事だからってわけじゃなく、”それがいい”と疑いもなく言っていることに私はすごく驚いたし、関心した。出来るか出来ないかは問題でなく、ただ何の目標もない私に、”私がやったら最高に幸せになれると思われるプラン”を考えてくれたのだ。私を含め日本人の多くは、実現性の高いことを想像しがちで、それを選びがちになっている。不可能だなんて誰も言っていないし、それが実現するかどうかは本当に自分次第なのだ。自由な発想が乏しくなっている自分に少し失望したとともに、柔軟な発想で私の将来を想像してくれた3人に本当に感謝している。そうだ、まずは自分が何か好きかを改めて考えて、素直にそしてシンプルに考えてみよう。私のバックパックは断捨離してすっごくシンプルになんたけど、頭の中はまだまだ荷物が多そう。あと1日をかけて、もう少しそのことについて考えてみよう。また一つ、大切な仲間と、大切な思い出が増えた。
 

【30日目】スペイン巡礼 〜Arzua

カミーノ・デ・サンティアゴ

2017/07/03
スペイン巡礼30日目
 
今日の目的は二つ。室内履きのサンダルを買うことと、メリデという町でプルポというタコ料理を食べること。以上。
 
いつもより少し遅くに出発した。巡礼はあと2日。お昼は有名なタコ料理を堪能してゆっくり行こう。
 
途中の町でATMでお金を降ろした。ちなみにお金を降ろしたのは、明日巡礼を終えるのに今回が初。1ヶ月間で、宿代と食事代を含め5万円しか使っていないことになる。東京で暮らすよりも旅をしていた方が、遥かに安価で生活ができるのだ。その足で隣の雑貨屋さんでビーチサンダルを買った。3ユーロ。日本に住んでいると、日々いかに不必要なものまで買っているかがわかる。食料品はまだしも、雑貨や洋服は特にだ。今は持ち運べる分だけを買って、ほぼ全てのグッズを毎日使っている。最強のノマドライフだ。
 
そうこうしているうちに、Melideの町についた。この内陸の町でなぜタコが銘品なのかは謎だが、町中に観光客向けのレストランが並んでいる。どれも同じ店に見えるので、店先で「アニョハセヨ〜!コニチワ〜!」と大声で客引きしている男性のいるお店にした。おそらく、色んな方のブログにも出てくる有名な人だと思われる。店先のガラス張りのキッチンで、大きな鍋でタコを煮ていて、茹で上げるところもパフォーマンスとしてお客さんが見ることができる。よく作られた店だった。
 
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開店直後だったのでまだ店内はすいており、一人で大きなソファー席に座った。朝からビールとプルポとガリシアスープだ。プルポは茹でたてのタコにオリーブオイルをたっぷりとかけて、塩胡椒したシンプルな食べ物だ。ただ日本のタコとは比べものにならないほど、一本一本の足が大きくて、噛んだ時の弾力が半端ない。日本のスーパーで買う、あのか細いタコの足はなんだったんだろうか、と衝撃を受けるほどに全く別の海産物を食べているよう。ガリシアスープは、ジャガイモがメインのスープだ。ピルグリムメニューのコースでもスープはなかなか出てこないので、あたたかいスープを飲んだのは今回の巡礼で始めてだったかもしれない。味は独特だが、日本人でも問題なく食べられる。一番小さいサイズでも食べきれないプルポは、パックに入れて持ち帰った。
 
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以前一緒に歩いた日本人のA子さんから、Ribadisoの村が本当に美しいと聞いていたので、この村にはぜひ泊まりたいと思っていた。小さな小川沿いにある小さな村で、どの家も庭先の花が綺麗で、明るくて美しい村だった。イメージでいうと、イングリッシュガーデンの中を歩いているような。ぜひこの村に泊まりたい、と思っていたがまさかのすべての宿が「Completo(満室)」だった。私が到着した時間はまだ早かったので、おそらくみんな事前に予約していたのだろう。本当に残念。もう一つ先のArzuaの町に泊まることにした。
 
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Arzuaの町の宿は、大きな通り沿いにいくつもある。ビルの一室を借りて経営しているところが多いようだ。暑さでばてていたので、公営のところではなく、手前にある私営のところにした。この宿はまさに現代のAlbergueという感じ。スタートアップのベンチャー企業が立ち上げたかのうに、システマチックでシンプル。厚いコルクボードで二段ベッドが区切られ、カーテンの仕切りもついて、夜行列車のような小さな四人部屋のようになっている。泊まっている人が少なかったのか、四人部屋に私一人で泊まらせてくれた。広いリビングにはおしゃれなソファーがランダムにいくつもあり、まるでシェアオフィスのよう。エアコンもガンガン効いていて快適だったのでした。
 
 

【29日目】スペイン巡礼 〜Palas De Rei

カミーノ・デ・サンティアゴ

2017/07/02
スペイン巡礼29日目
 
日の出前に起きる。空気やひやっとして、少し乾燥している。よし、雨は降っていないようだ。辺りは薄暗いが、白い外壁の建物が暗い中でもよく見える。美しい夢のような町、Portomarinを出発する。
 
高台にある町から一度崖を下り、湖につながっている川を渡る。だれもいない松林の中はしっとしとしていて、朝を歩くのに気持ちが良い。もうすぐ日の出だが、まだうっすらと霧が残っている。この瞬間が幻想的でまるで夢と現実の境目をふわふわと歩いているよう。少し風が吹くと、白い靄がさっと流れていく。そろそろ夜明けかな。
 
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森を貫く道路に出た。寂れた工場あとのような建物も、静かな朝の散歩コースなら怖くない。ただ、一人旅をしている自分をまじまじと実感させられるのだった。
 
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そして日の出を迎えた。ひさしぶりに見た、本日産まれたての太陽。ギラギラと大地を明るく照らし、燃えている。なんだかとっても嬉しくて、つい手を合わせてしまう。
 
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そしてまた森に入った。大きな木を照らす朝日の木漏れ日が、なんだか神々しく見えてしまう。こうやって山々や木々に神が宿っていると信じて自然を崇める気持ちも、今ならわかる。そこらじゅうに、エネルギーがみなぎっている。
 
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森を抜けると高台に出た。ゆるい登り坂だ。てっぺんまで来て振り返ると、歩いていた森が遠くに見えた。森はまだ雲海の中だ。照りつける太陽に、反射する雲がまるで海のようだった。
 
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ひさしぶりに晴れたのと、気持ちのよい気候がうれしくて、ずっと一緒に歩いてきた相棒の影と記念撮影。思えばこいつとは本当にずっと歩いてきたな。(曇りと雨の日以外は。)
 
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途中の村のカフェを休憩する。巡礼5日目からたまに出会っていたロシアの親子に出会った。刺青がたくさん入ったパンキッシュな夫婦と、小さな男の子の冒険旅ももうすぐ終わりを迎えようとしている。最初のころ、坊やはハンバーガーとポテトしか食べられなくて、両親を悩ませていたな。でもこのカフェでもまたハンバーガーをオーダーしている。そう、人間なんて30日程度じゃちっとも変われない。でも、この30日の冒険が、彼の一生の宝になることは間違いない。
 
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今日はPalas De Reiという町の公営のAlbergueに泊まることにした。少し湿気が多く、簡素な宿だったが、知り合いの巡礼者が受付開始を待っていたので一緒に待つことにした。彼がビールを何本か買ってきて、受付を待っているときに乾杯した。靴まで脱いで、狭い入り口で宴会だ。
 
受付をして所定のベッドで荷物を降ろし着替えていると、なんと部屋履きように使っていたビーチサンダルの鼻緒が切れた!もう何年も日本で使ったもので、今回の巡礼が終わったら捨てて帰ろうとしていたが、あともう少しのところで切れてしまった。部屋履きは巡礼者には必須なので、買うしかない。が、今日が日曜日だということにその時気付いた。スペインの日曜日は、スーパーが閉まっていることが多いのだ。他の巡礼者から情報を得るも、やはりこの町のスーパーもしまっているようだ。仕方なく、シャワーを浴びたあとも、汚れたトレッキングシューズを履いて過ごした。ついてない。
 
食料は持っていたのでキッチンで昼食をとっていると、ひさしぶりに日本人の女性に出会った。そしてこんなにキッチン用具が揃っているのに、自前のアウトドア用鍋とカトラリーセットでインスタントラーメンを食べていた。まさか、このセットを全部持ち歩いて巡礼しているの?かなり小柄な女性だが、明らかに大きすぎる荷物を背負ってここまで歩いてきたようだ。なんでも心配性で、全部必要に思えてしまうようだ。さらに早起きが苦手で、いつも8時くらいに起きて、日中の暑い中ゆっくりゆっくり時間をかけて巡礼をしてきたようだ。まさに、自分のスタイルを貫いている。
 
午後はあまり日当たりのよくない中庭で洗濯をして、かろうじて日が当たっている場所に洗濯物を干した。たまたま、仕事を辞めて世界一周中のイギリス人男性と話した。退職金を使い果すまで、世界を回るそうだ。40代くらいの男性だった。バイタリティがある。さて、私は次は何をしようか。そろそろ、巡礼を終えたあとのことを考え始めていた。人生は自分次第。私のやりようで、どうとでもなるのだ。楽しんで行こう。
 
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【28日目】スペイン巡礼 〜Portomarin

カミーノ・デ・サンティアゴ

2017/07/01

スペイン巡礼28日目

 
朝もやの中、出発する。すっきりとした天気ではないが、残り100kmということもあってか足取りは軽い。しばらくは牧場のような草原を歩き、また森の中に入る。牛が巡礼路をのっそりのっそりと歩いていたりして、刺激しないように歩く。もちろん牛の歩いたあとは、まだ湯気が出ていそうなほやほやのうんちが落ちていたりする。どおりで臭うわけだ。出発した頃の、緑の多かった巡礼路を思い出す。もう一ヶ月近く前のことなんだ。
 
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 サリアを越してからは、それほど山深いところはなく、民家を身近に感じながら歩くことになる。道で出会う巡礼者たちも増えてきて、サリアからスタートした人たちもいるのか、みんな元気がある。途中のFerreriosという村のAlbergue兼カフェで朝食をいただく。亭主もとても親切で、雰囲気のよいカフェだった。内装も可愛くて、ここに泊まりたいくらい。
 
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周りを見渡せば、今までに見覚えのある巡礼者ばかりだった。そしてゴールを数日後に控えて、ほんとにみんなテンションが高い。言葉が通じない同士だが、なんだかざわざわと言い出し、「どこだ」「そこだ」「あそこだ」と変なテンションで何かを探している。そしてついに、「あそこだーー!!!」と見つけたのが、サンティアゴまで100kmと記された石碑だった。これまでおそらく何千とみてきたホタテマークの石碑だったが、これは特別だ。みんなこぞって写真を撮っている。いったいぜんたいどうやって距離を正確に測っているのか不明だが、やっぱりなんだか嬉しい。もう少し先に数十メートル進むと、99.592kmという絶妙な数字のものもあったので、なんらかの基準で測っているようだ。こうなるとなんだか数字をきざむのが楽しくなってくる。100kmをこえてから、数字の刻みが細かくなり、数百メートルでも進んだ感覚が実感できるようになってきた。
 
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引き続き森の中を歩いていると、納屋のような壊れかけの建物の外に色とりどりのホタテが飾られたスーベニアショップがあった。世界各国の国旗や、きれいな模様が描かれている。こういったものも、お土産に買っていったら喜ぶだろうなーと巡礼中はほとんどなかった購買欲が湧いてきた。と同時に、もうすぐ帰るんだなという実感もわいてきた。
 
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森を抜けると、車道に出た。遠くに湖が見える。今夜の目的地、Portomarineの町だ。
 
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巡礼を終えたひとたちが皆、Portomarinの町の美しさについて思い出を語る。巡礼中に出会った日本人のA子さんも、すばらしい町だと絶賛していたので楽しみにしていた。湖のほとりの、まるで絵本に出てくるような町、というイメージが膨らんでいた。そして、イメージが現実になった。
 
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湖にかかる大きな橋が、対岸のPortomarinの町につながっている。久しぶりに青い空に、太陽の光を見た。湖面が光でキラキラとかが来て、周りの森の緑がよりいっそうきれいに見えた。本当にすばらしい景色。
 
対岸に渡ると、突然石の階段が現れる。町に直接つながる、巡礼者用のゲートのようだ。疲れた足に最後のトドメだが、もう町はすぐそこだ。登り切ると、さらに美しい景色に出会うことができた。
 
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Portomarinの町は、高台の山の斜面に築かれた町で、町中も坂が多いのが特徴だ。その分、高台の宿を目指せば眺めもいい。通りには白壁の美しい建物が並び、空の青とのコントラストが本当に一枚の絵のような町並みだった。お洒落なレストランでは美味しい魚料理も楽しめるようだ。通りを抜け、大きな広場に出た。広場の真ん中には、教会がある。巡礼者の壁画もあり、町中が巡礼者に対して優しい印象だ。
 
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たまたま顔見知りの巡礼者にあったので、一緒にAlbergueを探すことにした。彼はスマホでAlbergueの口コミサイトを閲覧し、オスピタリオ(管理人)の女性がとても親切だということで坂の上の方の通りにあった小さなAlbergueを選んだ。小さなキッチンとダイニングがあるだけのなんの変哲もない小さな宿だが、この町の宿は常に学生旅行や団体グループの”巡礼旅行者”が多く、大きめの宿を選ぶととても騒々しい夜を過ごすことになると教えてもらった。確かに。ここは小さめの宿を選んで正解だったかもしれない。
 
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わたしがスーパーに買い出しにいって戻ってくると、同じ宿の巡礼者がなんと表で青空ヘアサロンを開店中だった。バリカンを持ち歩く巡礼者なんて、珍しいのではないか。女性がヘアアイロンを持ち歩くようなものだ。彼はこうやって定期的に頭の毛を刈っているそうだ。でもなぜ、ヒゲはのばすのだろう?
 
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午後は暇だったので、Portomarinの町を散策することにした。こんなに晴れた日は本当にひさしぶり。気持ちよかった。湖のほとりに、大きなプールがあった。湖よりも明るい青が眩しい。小学生くらいの子供たちがたくさん遊んでいた。公共のプールなのだろうか?しばらく芝生でごろんと寝転がって、のんびりお昼寝をする。他の巡礼者も何人かがくつろいでいる。いっぱい太陽の光を浴びて、明日へのエネルギーをチャージした。さぁ、あと数日でサンティアゴだ。1日1日を大切に、歩いていこう。
 
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【27日目】スペイン巡礼 〜Vilei

カミーノ・デ・サンティアゴ

2017/06/30

スペイン巡礼27日目

 
そしてまたもや雨だった。もう何日も青空を見ていない気がする。疲れと、やる気のなさで身体が重い。完全にワクワクする気持ちの糸が切れて、早く巡礼なんか終えてしまいたいという面倒臭さに似た後ろ向きな気持ちでいっぱいだった。
 
何日目かの生乾きの服を着て、濡れたままの靴を履いて宿を出る。霧のような小雨が降っている。山の中のぬかるんだ道をゆく。舗装されていないので、歩くたびに泥に靴が沈む。水たまりをさけつつも、落ち葉がふがふがとした泥道で結局靴は汚れるのだ。せめてこれ以上の浸水だけはさけたい。
 
1時間ほど山の中を歩いていると、湧き水を見つけた。雨が降る中、レインコートの袖口に気をつけながら手ですくって飲んでみた。うまい。けど、雨が降っていなければ、もっと味わえただろうに。なんでも後ろ向き。
 
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山道を抜けて車道に出ると、牧場があった。雨の中、牛たちが草を食んでいる。心なしか、表情も悲しそうだ。
 
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また山道に入った。時々、「カフェまで⚪︎⚪︎km!!」とスペイン語で書かれた看板が、無造作さに置かれていた。次のカフェに入ろうかと思ったが、巡礼路から少し外れていたので諦める。とにかく、この雨の中、寄り道のために距離を歩くのはごめんだ。
 
さらに進むと民家が現れた。お世辞にも、キレイとはいえない、壊れかけた大きな屋敷だった。塀で覆われていて、小さな木製のドアが開いていた。中を覗くと、民族衣装のような明るい柄のテーブルクロスがかけられた台の上に、果物やジュースが並べられているではないか!木片に、”DONATOVO”(寄付)と書かれている。奥にはボロボロのソファーがあり、穀物を入れるのに使われる麻の布がかけられている。ソファーテーブル、いや、木箱の上にはコーヒーも用意されていた。よく見ると、そこは壊れかけた納屋の中だった。
 
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だれもいないようだが、足元に気配を感じた。何かがぴょこんと跳ねて、鉄製のゴミ箱の後ろに隠れた。じっとみていると、小さな子猫が飛び出してきた。それも一匹ではない、全部で三匹もいた。蚊の泣くような声で「にゃーにゃー」とみんな戯れて遊んでいた。
 
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すると母屋の方から、男性がゆっくりと歩いて出てきた。不審者だと思われないように”Hola”と笑顔で話しかけた。向こうも、”Hola”と返事をした。とても物腰が柔らかく、静かな雰囲気をまとった若い男性だった。聞くと、ここで農家をしながら、巡礼者たちに食べ物やお茶を提供して支援しているらしい。私にも熱いコーヒーをわざわざ入れ直してきてくれた。「どうぞ、座ってまってて」と言われたが、どうみてもノミがいそうなソファーに座る気持ちになれない。ので、猫と遊ぶフリをして回避した。
 
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巡礼途中にはこういった寄付で食べ物や飲み物を提供してくれているところがいくつもあった。一本道のど真ん中に無人のワゴンが置かれていたり、坂を登りきったところにパラソルを開いて冷たい飲み物を提供している陽気なおじさんなど、形はさまざま。でもこんな塀で囲まれた別世界のようなところは初めてだった。なんだか狐につままれたみたい。
 
やっと森を抜け、農村地帯へ突入した。大きな敷地を構えた農家の家々が点在していた。敷地を簡易的に囲った石垣の横を通ったりして、だんだんと町に近づいてきた感じがした。
 
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そしてついに、”SARRIA”の看板を発見した。サンティアゴまで100km地点の村だ。やっとここまできた!100km以上歩くと巡礼証明書が発行されるということで、ここサリアの町から歩き始める人も多いと聞いていた。多くの人が歩くということは、宿も争奪戦になるということだ。早く今夜の宿を見つけなければ。
 
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サリアの町は思っていたよりも、あっさりとした町だった。確かに町も大きいし、宿も多かったが、特に見るものがない。バルでハンバーガーと白ワインで簡単にランチを済ませ、次の町へ出発した。
 
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大きな川を渡り、線路を渡り、小さな森を抜け、サリアから2,3kmでVileiという小さな集落についた。集落の入り口にまるでリゾートホテルのようなキレイなAlbergueがあった。ここにしようかな、と迷いつつ、次のBarbadeloという集落には公営のAlbergueがあるので、そちらを目指すことにした。数百メートル進むと、すぐにBarbadeloの集落についた。小さな古い教会と、すぐそばに公営のAlbergueがあった。ドアの前まで行ったが、カーテンが閉まっていて、だれもいなかった。オープンの時間も書いていない。なんだかとってもテンションが下がってしまい、もう一つの私営のAlbergueに行ってみた。ドアを叩いたが、なんとこちらも留守のようだった。さらにテンションが下がった。Bardadeloの次の村は、なんと10km以上先だった。小雨の降る中、もう泣きそうだ。
 
仕方がないので、来た道を引き返すことにした。トボトボと歩いて、先ほど通過したリゾートホテルのようなVileiのAlbergueに泊まることにした。受付は併設するレストランのフロントにあって、内装も素敵な雰囲気だった。うん、ここにして良かった!すこし元気になった。通された部屋もコテージのような別棟で、二段ベッドもしっかりとした作りだった。建物自体が新しく作られたようで、内装もシャワールームもとってもキレイ!
 
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ラベンダーがキレイに植えられた大きな芝生の庭と、噴水なんかもあった。庭の先のビニールハウスに、洗濯用のシンクと物干しがあった。まだまだ雲いきも怪しいが、小雨が上がったので、とりあえず濡れた服を干してみた。
 
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夜はすこし贅沢をして、併設したレストランで久しぶりにピルグリムメニューをいただくことにした。時々一緒に歩いていたアメリカ人の陽気な親子と、ポーカーで生計を立てる北欧の女性がたまたまレストランに入ってきたので、一緒にいただくことにした。サラダに、ミートスパゲティーに、赤ワイン。なんと赤ワインは一人一本ずつ出てきた。もう笑えてくる。みんなで乾杯して、残り少ない巡礼話に花をさかせた。聞くと、なんと3人は、BarbadeloのAlbergueに泊まっているらしい!午後3時くらいに行ったら、普通に受付できたようで、きっと私が早すぎて管理人さんが留守だったのかも。運が悪い。でも、Barbadeloには商店もレストランも一切なく、宿には夕食がついていないので、なんとここVileiまで夕食を食べに戻ってきたらしい。結局、往復する運命だったのか。さらに笑えてくる。
 
 お酒も入ってか、すごく楽しい夜だった。こんな会話がずっと続けばいいのに、と惜しくなるくらい。今日の偶然の再会に感謝して、それぞれの宿へ戻っていった。
 

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【26日目】スペイン巡礼 〜Triacastela

カミーノ・デ・サンティアゴ

2017/06/29

スペイン巡礼26日目

 
雨の音で目を覚ます。あたりはすでにぼんやりと明るくなっていた。気持ちが上がらない中、乾ききっていない服に着替えて、濡れた冷たい靴を履いて、宿を出た。目の前には、どんよりとした空の下に、晴れていたらすばらしく美しかったであろう山々が雲海の中に広がっている。
 
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山のてっぺんのはずなのに、巡礼路はまだ上り坂だ。鬱蒼とした茂みの中に小道が続いている。レインコートから唯一肌を露出している顔に、冷たい雨がぴちぴちと吹き付ける。つらい。
 
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しばらく登ると、今度は下り坂に入った。早くこんな山降りてしまおうと、自然と早足になる。よくブログやパンフレットで見た巡礼者の銅像の横を通り過ぎるも、近くにいく気力がなく遠目から写真をとった。銅像は少し前かがみで、まるでこんな風雨に吹かれて歩いているようだった。
 
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いくつかの村々を通り過ぎたが、どの村も曇天の中では暗く、少し不気味に見えた。きっと晴れていたら庭先に草花がきれいに咲き、美しい村だったのだろう。
 
もう十分雨に耐えた、というところで、小さな山小屋のバーに入った。こんな山の中腹にもバーがあるなんて、ありがたい。山小屋の中では、ちょうど亭主が暖炉に火をつけているところだった。「さぁ、どうぞ」と優しくカウンターへ席を案内してくれた。カフェコンレチェのダブルサイズを頼んだ。
 
すると他の巡礼者の何人かが入ってきた。この前も一緒に歩いた、ポーカーが趣味の北欧の美しい女性のいるパーティーだ。よくみると彼らは、ゴミ服をに穴を開けて頭と腕を通してレインコートを手作りしていた。それにしてもあまりにも手作りすぎやしないか。髪も服もバックパックもびっしょり濡れていた。ゴミ服を脱ぎ捨てると、店の亭主に「雨がっぱは売っていないか?」と藁にもすがる思いで訪ねていた。こんな人たちがたくさんいるのだろう、亭主は奥から何種類か値段の違うレインコートを出してきた。したは4ユーロから上は10ユーロまで。私から見たらどれも変わらない。私が日本から遥々持ってきたコロンビアのレンコートには敵わない。少しがさばるが、丈夫で柄もきれいで、さすが音楽フェスで重宝されているだけはある。
 
散々盛り上がったあと、ワインのボトルを開け始めた彼らを置いて、バーをあとにする。まだ雨は上がらない。ほぼ山を下りきったところで、おんぼろな家々が立ち並ぶ集落を通過した。久しぶりに、ものすごい臭いがした。家畜を飼っているのか、糞尿が雨に濡れてさらに悪臭を放っている。息を止めて通過する。
 
森が開けて、牧場が現れた。その先に小さな村もある。「今日はここで終わり!!!」そう決めて、早速目の前のレストランに駆け込む。地元のおじいちゃんたちが何人かテーブルにいてランチをしていた。写真のメニューのある定食屋で、わりと感じがいい。ソーセージと豚肉ののったプレートを頼む。ついでに白ワインも!冷たい雨の中、山を下りきったご褒美だ。
 
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食事が終わると、さぁどこに泊まろうか。何人かの巡礼者がレストランの前を通過したのが見えた。今日はきっとみんなこの辺りで泊まるだろう、早く宿を探さないと満室になってしまいそうだ。
 
レストランを出て、もう少し村の中心街に向かった。何人かの巡礼者がウロウロと宿を探している。だいぶ疲れが溜まっていたので、もう一番先に目に入った宿に入った。石造りの可愛らしい作りのAlberugueだ。一階はおしゃれなレストランだった。二階にいくつかベッドがある宿になっていた。掃除が行き届いており、清潔だった。
 
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止むことのない雨の中、特にすることがないので、午後中ベッドの上で過ごした。窓辺に小さなプランターがあり、赤い花が咲いていた。庭の芝生には子供用の錆びれたブランコがあり、長靴を履いた小さな子供2人が傘をさして遊んでいる。ふと、なんだか昔訪れたことのある、イギリスの田舎町コッツウォルズを思い出した。ある意味、この村はスペインの原風景を壊さずに大切に残し続けているのだと、気がついた。カミーノという道も、何百年もの歴史がある景色を残し続けている。観光地化され多少経済が潤っているとはいえ、その努力を続けているスペインの人たちがいるからこそ、世界遺産に登録される価値があるのである。改めて、この道を歩かせていただいていることに感謝したのでした。