スペイン巡礼 フランス人の道 30代ひとり旅

【女性ひとり旅】32日間かけてスペイン巡礼フランス人の道を歩き、マドリッドで「暮らすように旅をする。」を実践。質問あれば、お気軽にどうぞ!

【27日目】スペイン巡礼 〜Vilei

カミーノ・デ・サンティアゴ

2017/06/30

スペイン巡礼27日目

 
そしてまたもや雨だった。もう何日も青空を見ていない気がする。疲れと、やる気のなさで身体が重い。完全にワクワクする気持ちの糸が切れて、早く巡礼なんか終えてしまいたいという面倒臭さに似た後ろ向きな気持ちでいっぱいだった。
 
何日目かの生乾きの服を着て、濡れたままの靴を履いて宿を出る。霧のような小雨が降っている。山の中のぬかるんだ道をゆく。舗装されていないので、歩くたびに泥に靴が沈む。水たまりをさけつつも、落ち葉がふがふがとした泥道で結局靴は汚れるのだ。せめてこれ以上の浸水だけはさけたい。
 
1時間ほど山の中を歩いていると、湧き水を見つけた。雨が降る中、レインコートの袖口に気をつけながら手ですくって飲んでみた。うまい。けど、雨が降っていなければ、もっと味わえただろうに。なんでも後ろ向き。
 
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山道を抜けて車道に出ると、牧場があった。雨の中、牛たちが草を食んでいる。心なしか、表情も悲しそうだ。
 
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また山道に入った。時々、「カフェまで⚪︎⚪︎km!!」とスペイン語で書かれた看板が、無造作さに置かれていた。次のカフェに入ろうかと思ったが、巡礼路から少し外れていたので諦める。とにかく、この雨の中、寄り道のために距離を歩くのはごめんだ。
 
さらに進むと民家が現れた。お世辞にも、キレイとはいえない、壊れかけた大きな屋敷だった。塀で覆われていて、小さな木製のドアが開いていた。中を覗くと、民族衣装のような明るい柄のテーブルクロスがかけられた台の上に、果物やジュースが並べられているではないか!木片に、”DONATOVO”(寄付)と書かれている。奥にはボロボロのソファーがあり、穀物を入れるのに使われる麻の布がかけられている。ソファーテーブル、いや、木箱の上にはコーヒーも用意されていた。よく見ると、そこは壊れかけた納屋の中だった。
 
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だれもいないようだが、足元に気配を感じた。何かがぴょこんと跳ねて、鉄製のゴミ箱の後ろに隠れた。じっとみていると、小さな子猫が飛び出してきた。それも一匹ではない、全部で三匹もいた。蚊の泣くような声で「にゃーにゃー」とみんな戯れて遊んでいた。
 
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すると母屋の方から、男性がゆっくりと歩いて出てきた。不審者だと思われないように”Hola”と笑顔で話しかけた。向こうも、”Hola”と返事をした。とても物腰が柔らかく、静かな雰囲気をまとった若い男性だった。聞くと、ここで農家をしながら、巡礼者たちに食べ物やお茶を提供して支援しているらしい。私にも熱いコーヒーをわざわざ入れ直してきてくれた。「どうぞ、座ってまってて」と言われたが、どうみてもノミがいそうなソファーに座る気持ちになれない。ので、猫と遊ぶフリをして回避した。
 
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巡礼途中にはこういった寄付で食べ物や飲み物を提供してくれているところがいくつもあった。一本道のど真ん中に無人のワゴンが置かれていたり、坂を登りきったところにパラソルを開いて冷たい飲み物を提供している陽気なおじさんなど、形はさまざま。でもこんな塀で囲まれた別世界のようなところは初めてだった。なんだか狐につままれたみたい。
 
やっと森を抜け、農村地帯へ突入した。大きな敷地を構えた農家の家々が点在していた。敷地を簡易的に囲った石垣の横を通ったりして、だんだんと町に近づいてきた感じがした。
 
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そしてついに、”SARRIA”の看板を発見した。サンティアゴまで100km地点の村だ。やっとここまできた!100km以上歩くと巡礼証明書が発行されるということで、ここサリアの町から歩き始める人も多いと聞いていた。多くの人が歩くということは、宿も争奪戦になるということだ。早く今夜の宿を見つけなければ。
 
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サリアの町は思っていたよりも、あっさりとした町だった。確かに町も大きいし、宿も多かったが、特に見るものがない。バルでハンバーガーと白ワインで簡単にランチを済ませ、次の町へ出発した。
 
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大きな川を渡り、線路を渡り、小さな森を抜け、サリアから2,3kmでVileiという小さな集落についた。集落の入り口にまるでリゾートホテルのようなキレイなAlbergueがあった。ここにしようかな、と迷いつつ、次のBarbadeloという集落には公営のAlbergueがあるので、そちらを目指すことにした。数百メートル進むと、すぐにBarbadeloの集落についた。小さな古い教会と、すぐそばに公営のAlbergueがあった。ドアの前まで行ったが、カーテンが閉まっていて、だれもいなかった。オープンの時間も書いていない。なんだかとってもテンションが下がってしまい、もう一つの私営のAlbergueに行ってみた。ドアを叩いたが、なんとこちらも留守のようだった。さらにテンションが下がった。Bardadeloの次の村は、なんと10km以上先だった。小雨の降る中、もう泣きそうだ。
 
仕方がないので、来た道を引き返すことにした。トボトボと歩いて、先ほど通過したリゾートホテルのようなVileiのAlbergueに泊まることにした。受付は併設するレストランのフロントにあって、内装も素敵な雰囲気だった。うん、ここにして良かった!すこし元気になった。通された部屋もコテージのような別棟で、二段ベッドもしっかりとした作りだった。建物自体が新しく作られたようで、内装もシャワールームもとってもキレイ!
 
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ラベンダーがキレイに植えられた大きな芝生の庭と、噴水なんかもあった。庭の先のビニールハウスに、洗濯用のシンクと物干しがあった。まだまだ雲いきも怪しいが、小雨が上がったので、とりあえず濡れた服を干してみた。
 
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夜はすこし贅沢をして、併設したレストランで久しぶりにピルグリムメニューをいただくことにした。時々一緒に歩いていたアメリカ人の陽気な親子と、ポーカーで生計を立てる北欧の女性がたまたまレストランに入ってきたので、一緒にいただくことにした。サラダに、ミートスパゲティーに、赤ワイン。なんと赤ワインは一人一本ずつ出てきた。もう笑えてくる。みんなで乾杯して、残り少ない巡礼話に花をさかせた。聞くと、なんと3人は、BarbadeloのAlbergueに泊まっているらしい!午後3時くらいに行ったら、普通に受付できたようで、きっと私が早すぎて管理人さんが留守だったのかも。運が悪い。でも、Barbadeloには商店もレストランも一切なく、宿には夕食がついていないので、なんとここVileiまで夕食を食べに戻ってきたらしい。結局、往復する運命だったのか。さらに笑えてくる。
 
 お酒も入ってか、すごく楽しい夜だった。こんな会話がずっと続けばいいのに、と惜しくなるくらい。今日の偶然の再会に感謝して、それぞれの宿へ戻っていった。
 

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