スペイン巡礼 フランス人の道 30代ひとり旅

【女性ひとり旅】32日間かけてスペイン巡礼フランス人の道を歩き、マドリッドで「暮らすように旅をする。」を実践。質問あれば、お気軽にどうぞ!

【32日目】スペイン巡礼 〜Santiago de Compostela

カミーノ・デ・サンティアゴ

2017/07/05
スペイン巡礼32日目
 
朝4時に目が醒める。支度をして、キッチンに置いてあった”ご自由に”のドーナッツを2個頬張って出発した。さぁ、今日は巡礼最後の日。いつもと同じ1日の始まりなのに、なんだか胸が高鳴る。
 
辺りは暗かったが、町の通りは街灯を頼りに地図を見ながら進む。まだ車の通りもほとんどなく、町全体が静まり返っていた。町を抜けると昨日一度通った森に入った。本当に真っ暗だった。そうだ、今朝は月が出ていない。今までは月明かりに照らされた植物がうっすらと見えたが、今日に限ってはそれさえもない。風も吹いていないので、葉音もなく、森は静まり返っていた。気味が悪いほどに。大きな木に囲まれた森の中の一本道をゆく。ヘッドライトで照らされる範囲の外は真っ暗で、側に木が立っていることさえも見えない。初めて、森が怖い、と感じた。今まではどんなに朝早く出て山の中を一人で歩いても全くそんなことは感じなかったのに、この異様な静けさの中をたった一人で歩くのが恐ろしかった。そしてその時突然に、道の先に白い光の玉が現れた!!!驚きと恐怖と緊張で、身動きが取れず、全身から汗が噴き出した。
 
そしてその光の玉は、俊敏に上下に動き、ぱっと消えた。「え?!なに?!」混乱と恐怖で、動けなかった。咄嗟に逃げようと、後ろを振り返った。すると、後ろにも遠くに白い玉が見えた。一つではなく、二つだ。「ん???」自分の頭のライトで照らされた先をよーく見ると、あちらも頭にヘッドライトをつけた人間だった。「なーんだ・・・」おそらくさっき見たのも、ヘッドライトをつけた巡礼者だったのだ。かなり遠くを歩いていたので、私のライトでも照らしきれず、向こうの頭のライトだけが見えたのだ。お互いに前だけ向いて歩いているので、気づかないのだ。
 
そんな恐怖体験をしつつ、ものすごい早歩きで進む。山を登るのも猛スピードだ。まるでトレイルラン。山の上には空港があり、滑走路の横を通る。小さな集落もいくつか通りすぎ、徐々に巡礼者たちも増えてきた。今朝は朝ごはんもパスして、ひたすらにサンティアゴを目指す。カフェ、ゴルフ場、郊外の住宅地、学校、教会など、色々通りすぎたが、一瞬も休憩しなかった。
 
そしてついにサンティアゴ手前5km地点の、Monte Gozaの山の頂上にきた。ここには大型のAlbergueがあると聞いていたが、本当に大型だった。いくつもの棟が広大な敷地の山の斜面に建てられていて、まるで収容所のよう。どこが受付なのかもさっぱりわからない。この丘から、サンティアゴの町が遠くに見えた。もう少しだ。
 
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丘を下るといよいよ、車通りの激しい街中に入った。巡礼者たちの置き土産(というかもはやゴミ溜め)で飾られた、”Santiago de Compostela”の巨大看板が出迎えてくれた。ここまで頑張って歩いてきて、いらなくなったカッパをこうやって捨てて汚していくなってどんな失礼な神経をしているんだろうか?と思ってしまうのは、日本人だからだろうか。
 
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街中にもしっかりと「Camino de Santiago」の看板があって、安心する。これで迷うことがない。それにしても、もう少しでこの看板を追い続ける日々が終わる のかと思うと少し寂しい。
 
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旧市街に入るまではわりと近代的な建物が並ぶ。アパートなどの背の高い建物が多いが、そのビル間のちょっとしたスペースで共同菜園などがあり不思議な町である。
 
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そして旧市街に入り、石造りの建物を横目に少し迷いながらも、その建物を目指す。
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そしてついに、Santiago de Compostelaに辿り着いた。
 
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2017年7月5日 9:07a.m. ついに辿り着いた。800kmの道のりを、32日間かけて歩いてきた。
 
 
巡礼を歩いた多くの方が言うように、この場所に辿り着いたことに対する溢れ出るような感動は特にない。なぜならこの歩いてきた道の途中で見てきたこと、経験したこと、考えたことの方があまりにも自分にとっては重要で、十分に心を動かされたからだ。単純にこの場所にたどり着くことが巡礼なのではなく、800kmという道中で自分が何を得るかということが巡礼の本意なのだと改めて思い知った。
 
この広場にたどり着く直前に、巡礼を始めた頃に何度か出会った女の子とすれ違った。ウクレレを持って巡礼をしていて、よく宿で弾いて歌ってくれていたっけ。そんな彼女がカテドラルのある広場から引き返してくるときの表情が今でも忘れられない。帽子を深くかぶって、そこから見えた表情は硬く強張っていた。彼女は800kmを歩いて、何が見えたのかな。どうか、あの歌っていたころの、明るくて楽しい気持ちと笑顔を忘れないでいてほしい。いずれにせよ、何かを得たことは間違いない。巡礼は私たちを手ぶらでは返してくれないのだ。
 
それにしても、カテドラルは見事に青い布でカバーされていた。工事中なのは知っていたが、2、3年前からこの姿で、あと10年くらいは修復に時間がかかるとのこと。なんだか煮え切らないが、仕方がない。巡礼証明書をもらいに行くことにした。
 
 
事前にネットで調べていたので、巡礼オフィスはすぐにわかった。広場を抜け、階段を下りて右に曲がるとすぐだ。巡礼者でごった返していると思いきや、まだ時間が早かったので2、3人が並んでいるだけだった。順番を待ち、カウンターでクレデンシャル(スタンプ帳)を提出すると、受付の女性がさらっとさらっとチェックし(スタート地点と、昨日泊まった宿しかみていない気がする)、巡礼証明書と距離証明書をとても可愛らしいフォントで手書きでこれまたさらっと書いてくれた。受付カウンターの横にはお土産もの屋があり、そこで賞状を入れるような筒が2ユーロで買えるので、それに入れて持ち帰ることにした。
 
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次に向かったのは、大聖堂でのミサだ。 1日に数千人の人たちがここサンティアゴに辿りつくだけあって、数回行われるミサのどの回もものすごい人数だった。席は数百人分用意されているが、開始15分前にはほぼ全ての椅子が埋まり、立っている人も数百人はいただろう。開始前は大聖堂内は薄暗いのだが、ミサが始まると黄金の祭壇に照明が当たり、かなり明るくなる。演台に立つ人が「サイレンシコ(静粛に)」と何度も通達するも、これだけの数の人がいるとなかなか静かにならない。演説はスペイン語と英語で交互に通訳されながら進む。巡礼中に何度もミサを受けたので要領はわかっているが、説教も長いので時間がかかる。どうやって選ばれたのかはわからないが、巡礼者の中から選ばれた数人が前に出て、名前と、どこの国から来たのかと、どこの町から出発したのかを一人ずつ述べていく。最後はお決まりの、周りの席の人たちと握手をして、ここで出会えたことに感謝して終わり。なんてことはない、ただの儀式だ。そう、想像してはいたが、こんな感じであっけなく、サンティアゴの巡礼が終わってしまった。
 
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思えば朝4時過ぎに出発し、朝9時にはサンティアゴに着いた。ということは、4時間ちょっとで20kmを歩いたことになる。今までで最速だ。最後までせっかちだったな。朝ごはんも食べずに来たが、ピルグリムメニューを食べるほどお腹が空いていなかったので、小さなバルに入りスープとクロケッタとビールで休憩した。さて、これからどうしようか。散歩でもしようか。サンティアゴの旧市街は通りも石畳で、建物も古く、中世のヨーロッパの街並みのイメージ。スーベニアショップとレストランが星の数ほどあり、常に通りは賑わっている。大聖堂の目の前の広場には団体の巡礼者の歓声が響き、記念の撮影をしている。少し離れたところで、単独の巡礼者が静かに大聖堂を見上げている。みんなそれぞれの想いを噛み締めているのだと思う。このサンティアゴの街は数百年もの間、毎日新しい巡礼者たちを迎えてきた。来るもの拒まず、そしてこの巡礼を成し遂げた人たちの新しい門出を祝い、新しい人生へと送り出している。
 
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午後3時を回ると、早速ホテルにチェックインをした。巡礼を終えた記念の自分へのご褒美で、今夜はホテルを予約していた。大聖堂のすぐ近くの、五つ星ホテルだ。石造りの外観だが、内装はモダンに改装されていてとても歴史のある建物とは思えないほど。部屋には大きくて広いベッド!そしてここのホテルに決めたのはなんといっても、バスタブがあるからだ。暑いお湯を張り、約一ヶ月ぶりに湯船に浸かることができた。24時間食べ放題の軽食つきで、トーストやフルーツ、コーヒーがいつでも飲めた。
 
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夕食は一人で祝杯を挙げに、バーホッピングに出かけた。どのお店も魅力的で、店先で客引きする店員も親切なのでかなり迷ったが、その中でも外観が素敵で、店内もレトロで雰囲気のあるところを選んだ。カウンターのショウケースに並ぶ、海産物や野菜の料理はどれもこれも美味しそうで、色も鮮やかで照明に照らされてまるで宝石のようだ。欲しいものを選ぶと、その都度温めたり、焼いたりして調理してくれる。食べたことがないくらい弾力のある食感のエビや、パン粉をのせてちょっと焼いた貝がどれもこれも美味しい。接客も丁寧で、本当に気持ちが良い。巡礼を成し遂げた夜に、思い切りスペインらしい観光を楽しんだ。
 
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さぁ、これで私の32日間の巡礼の旅は終わってしまった。次はどこへ向かおうか。まだまだスペインの旅は終わらない。
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