スペイン巡礼 フランス人の道 30代ひとり旅

【女性ひとり旅】32日間かけてスペイン巡礼フランス人の道を歩き、マドリッドで「暮らすように旅をする。」を実践。質問あれば、お気軽にどうぞ!

【9日目】スペイン巡礼〜Granon

カミーノ・デ・サンティアゴ

2017/06/12

スペイン巡礼9日目

 
今朝は100人規模の大部屋(男女混合)だったので、みんなを起こさないようにかなり気を使って起きた。就寝室を出るとすぐに談話室兼キッチンなのだけど、もう何人かが支度をしていた。もうすでに埃だらけの靴を履き、紐をぎゅっと締めて歩き出す。
 
昨日パワーをもらった、エアーズロックのような赤土の大きな岩には切り通しのような通り道があって、越えていく。街灯がなく真っ暗な道をヘッドライトだけで照らして進んでいく。よくよく考えてみると、怖いんだけれど、やっぱりワクワクの方が大きくて。この闇の先がどうなっているのか知りたくて、ずんずん進む。
 
20分も歩かないうちに、ほんのうっすらと、真っ暗闇が濃い紺色になったころ、進んできた道を振り返ると、町でみたエアーズロックのような岩がはっきりとしたシルエットで見えた。あんなに大きかったんだ!砂漠のような平地にぱかっと逆さにして盛られたプリンのような岩だった。これも本当に美しい景色。写真には撮れないので、心に焼き付けて先を進む。
 
今日の工程はほとんど村がないので、最初の村でカフェによらないと1日中なにも食べられなそうだ。5kmほどいったAzofraという小さな村のカフェでカフェコンレチェとクロワッサンを食べる。並べられたオムレツにはコバエがいたので、袋入りのクロワッサンにしたのだ。こんなこともある。でもカフェコンレチェはやぱり美味しい。この村で食べておいてよかった。案の定、この先には食べるところなど何もなかった。
 
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この先は少し高低差のある山をひたすら登っていく。なだらかな上り坂なので、感覚としては平地を歩いているような。でも膝にはしっかりと負担がかかっている。あたりは一面、草原。
 
日本にいる母が、今日の行程沿いにある「空に続く道」を写真に撮ってきてほしいと言っていた。Ciruenaという村の近くにあるとのこと。それらしき村に辿り着く。新しそうな集合住宅が並んでいるがどこも空き家でまるでゴーストタウン。人っ子ひとりあるいていなくて、寂しい村だった。村を抜けると、また草原に突入する。みんなどこで買い物とかしてるんだろ。
 
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例の「空に続く道」というのが、なかなか見つからない。なだらかな傾斜に一本道が続き、他に建物がないので、まるで空に続いているようにみえるようだが、どこまでいっても草原に一本道なので、どこがその道なのかがわからない。どれもそのような道にみえる。いくつかのポイントから何枚も写真をとって、なんとかそれらしき道を発見できたからよかった。
 
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いつまでも続き草原に嫌気がさしてきたころ、やっとSanto Domingoの町についた。小さくもなく、大きくもなく、これといって綺麗な建物や教会もなく、中途半端な印象。そして何より、陰気臭い。カミーノを歩いて身についたことは、気持ちのよい場所かそうでないのか、自分自身ではっきりとわかるようになったこと。そして、この町はわたしにとって気持ちのよい町ではないのだ。スキップして次の町へ向かうことに決めた。
 
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と、その前に、私は大きな決断をした。「よし、寝袋を買い換えよう。」これは冗談ではなく、本当にこの町のアウトドアショップで買い換えたのだ。日本から持ってきた寝袋は新しいものなんだけど、なんせサイズが大きい。私の45リットルのバックパックの半分ほどを占めていた。さらに周りのヨーロッパ人が持っている寝袋は驚くほどコンパクトで、軽そうだった。宿でそれを見るたびに羨ましくて仕方なかった。荷物の大きさと重さが歩くことに重大な負担がかかることを知った私は、ついに寝袋を買い換えた。日本から持ってきたものの、1/3くらいの大きさで70ユーロくらいだった。前の寝袋はその場で捨ててもらった。バックパックが一気に軽くなり、快適になった。よし、これでこの先も歩けそう。
 
Santo Domingoの町から5キロ先の、Granonという町を目標にした。すでに足はだいぶ疲れて、日も高くなっていたので、体力のタイムリミットは近い。車の通りが結構多い、大きな道路沿いのカミーノ専用道路をとぼとぼと歩く。道は砂利で、乾燥しているので埃が立ち、つらい。意識が朦朧としながら、途中で立ち止まりながら、やっと着きそうになった時、なだらかな坂道が地味につらい。半べそになりながら村に到着した。小さな村だが、少し高台にあり、風通しもよくて雰囲気もよい。まずはカフェに入り、ビールとサンドイッチを食べた。急に身体が冷えて、寒くなった。おかしなものだ。
 
目の前に教会があったので、ぐるりと回ると、なんと教会の二階にアルベルゲがあるとのことで、今夜はここにお世話になることにした。古くて、頑丈な石造りの薄暗い螺旋階段を登っていくと、Tシャツにゆるっとしたデニムをきたおじさんが迎えてくれた。冗談を言われたのだが、スペイン語でよくわからなかった。受付をすると、ここはスタンプがないこと、寄付制の宿であること、食事はみんなで取ること、を教えてくれた。二階にキッチンと談話室があり、三階はなんと雑魚寝タイプの寝室だった。もちろん男女混合で薄いマットレスの上に寝袋を敷いて寝るタイプだった。わたしの隣は太ったおじさんだった。「この人、いびきがうるさそうだな」と思ったけど、夜は案の定うるさかった。屋根裏部屋には洗濯ルームがあるが、薄暗くて風も通らないので乾きが悪そうだ。みんなは外の芝生にそのまま洗濯物を広げて乾かしていた。洗濯をすませると、散歩に出てみた。が、住宅と教会しかない静かな村だった。
  
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夕方、アルベルゲを管理するおじさんと、アルベルゲの料理人のおじさんと宿泊するみんなでご飯の準備をした。野菜を切ったり、お皿を並べたり。みんなでやると早くてとっても楽しい。サラダと具沢山のスープとワイン。デザートにはオレンジ。いろんな国からやってきてたまたまこの宿に泊まった20数名が、一緒にご飯を食べた。共通言語は英語。楽しい会話と、おいしい食事。これこそ、カミーノでやりたかったことの一つが体現できた。
 
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食事のあとはみんなで後片付けをして、秘密の扉を開けて、秘密の部屋に移動。そこは教会の屋根裏部屋だった。下には先ほどミサをした講堂がみえる。黄金のマリア像が輝いていて荘厳に見えた。ろうそくを一人一人もち、3分間の瞑想をした。が、笑いをこらえきれないメンバーが数名いて、みんなで大爆笑。瞑想のあとは、自分がカミーノにきた目的を一人ずついい、そして最後はみんなで握手とハグをし合い、終了。こういったことをリフレクションというらしい。初めての経験で、たのしかったし、この場にいられたことが幸せだった。みんなで何かを一緒にできたこと、時間を共有できたことがなにより幸せだった。表現しがたいが、これが素直な気持ち。
 
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そんな幸せいっぱいの夜は、おじさんの大爆音のいびきに耐えながら、就寝したのでした。