【22日目】スペイン巡礼 〜Foncebadon
カミーノ・デ・サンティアゴ
2017/06/25
スペイン巡礼22日目
まだ暗いうちにAstorgaを出る。町のはずれに大きな教会があった。まだ日の出前の藍色の空をバックに、幻想的に見えた。静まり返って誰もいない通りを歩く。空気が澄んで、凛としていた。気持ちが良い。
町を出ると、建物もまばらになり、一気に田舎道になった。道は山の方に向かって一本道だ。今日はこの山の頂上付近まで行く予定。気合いが入る。
いくつかの町を通り過ぎるうちに、いつの間にか夜が開けて、あたりは明るくなっていた。小さな村のバルに入って朝食を食べた。巡礼者で混んでいるが、店員の愛想は悪く、コーヒー以外のパンやクッキーは全てスーパーで売られているものをそのまま出していた。そそくさと食べて、村を出た。
次にたどり着いたのは、El Gansoという村だった。ここも寂しい村で、いくつかの土産物屋があったが、静かで人がいなかった。家々も簡素で、教会さえも鄙びて見えた。
El Gansoを出ると、いよいよ山に向けて何もない一本道になった。虹のかかった十字架がようこそと出迎えてくれている。傾斜もきつくなり、木々も深くなってきた。フェンスには、巡礼者たちがかけたお手製の十字架がところ狭しと掲げられている。
森を抜け、林を抜け、どんどん登ってゆく。あたりが開けると、牧場があり、その先にもっと高い山が見えた。まだゆくのか・・。今日は思ってたよりも大変な道だ。見晴らしのよいバーがあったので、休憩。靴を脱いで、芝生のあるテラスでのんびりビールをいただく。他の巡礼者も通りがかるたびに、吸い込まれるようにこのバーに入ってきた。そしてみんな荷を降ろし、靴を脱いで芝生でくつろいだ。
さぁ、みんなより一足先に出発だ。本格的に山に突入する前の、最後の休憩地点でもあるRabanalの村はとても雰囲気が良かった。可愛らしいレンガ造りの建物が小さな通りに並び、猫がのんびりと歩いていた。町のご婦人も気軽に話しかけてくる。とてもいい村。
村を出ると、乾いた砂利道が続いた。カラカラに乾いた土壌に、硬い葉をつけた植物が水分を逃すまいと必死に生えている。まるでオーストラリアのような風景が遠くまで広がっていた。
いよいよ急勾配となり、息を切らしながら、ギラギラと照りつける太陽の下を進む。まるで土石流があったんじゃないかと思うくらい、ぐちゃぐちゃに変形した(もちろん舗装されていない)道を息もきれぎれ登ってゆく。途中、ロッククライミングじゃないかと思うくらい、道無き道を足元に気をつけながら登った。
やっとのことで登りきり、辺りが開けると、今日の目的地Foncebadonの村についた。山のほぼ一番高いところにある村で見晴らしがよいはずだが、あいにくの曇天で、さらに天気が悪くなりそうな予感がした。村、というよりは山間の集落といった感じで、傾斜に沿って築かれているので、家々を結ぶのも舗装されていない傾斜のきつい道だった。
数件ある家も壊れていたり、ゴミが庭に放置されていたりと、雰囲気はいいとは言えない。次の村に進むか迷った。一件しかない食堂に巡礼者が溜まっていたので、話を聞いてみた。ある男性が、「次のAlbergueのManjarinはヒッピープレイスだよ」という。彼がいうには、男女一緒の雑魚寝スタイルの宿で、ヒッピーがいっぱいいるらしい。悪いタバコでも吸うのかな?それはそれでいいのだが、Manjarinまでは5km以上あるので、今の体力では進む気力がなかった。
この集落に泊まるのは躊躇したが、一番良さそうなAlberugueに様子を見にいってみた。Pasoda del Druidaは高台にある、新しい宿だった。キッチン、ダイニング、シャワールームもきれいで、ベッドも下の段にしてくれるという。よし、ここに決めた。
シャワーをあび、洗濯をして干そうとしたとき、やっぱり雨が降ってきた。無理して先に進まずに、ここでステイしてよかった。ダイニングにはソファーもあり、ゆっくりくつろぐことができたのがよかった。事前に買い込んでいたレンチンできるパエリヤをつまみに、宿でワインを買って飲んだ。
全てはタイミングだな、と改めて思う。進むのも、立ち止まるのも、自分次第。無理をせずに一度立ち止まって、最良の選択ができるようになってきた。自分が望まないシチュエーション(例えばこの集落のような)の中にいても、冷静に考えて最良の選択をすることで、快適に過ごすことができている。そうやって一歩一歩進んでいこう。
こうやって、道を歩くことと、自分の人生を歩むことを重ね合わせて学びになることが度々あった。今日はそのうちの一つ。こうやって経験値が上がっていくのも、ドラクエみたいでカミーノの醍醐味なのである。