スペイン巡礼 フランス人の道 30代ひとり旅

【女性ひとり旅】32日間かけてスペイン巡礼フランス人の道を歩き、マドリッドで「暮らすように旅をする。」を実践。質問あれば、お気軽にどうぞ!

【23日目】スペイン巡礼 〜Ponferrada

カミーノ・デ・サンティアゴ

2017/06/26

スペイン巡礼23日目

 
朝、少し風が強い中出発する。山の頂上に近い宿なので、出発と同時に登り坂だ。昨夜雨が降ったせいか、植物も濡れていて空気もしっとりとしている。
 
曇っているのか星も見えず、あたりは真っ暗だ。草が生い茂って、数メートル先も真っ暗で見えない。少し恐怖を感じた。振り返ると、巡礼者の女性が歩いてきた。彼女も同じことを思っていたようで、しばらく一緒に歩くことにした。私のヘッドライトだけが頼りだ。
 
車道を渡り、巡礼路は車道脇の獣道のような草が生い茂った道に続いていた。こんな山奥にもホタテのマークがしっかりとあるのがすごい。
 
10分ほど歩くと、それが見えてきた。巡礼路の中でも有名なスポット、Cruz de Ferroだ。何百年も前から巡礼者たちが、自宅から持ってきた石を置いていく祈りの場所。一本の柱の周りには、巡礼者たちが置いていった石でこんもりと山になっている。
 
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が、到着したのが朝6時だったため、暗くて何も見えない。ヘッドライドを当てて、なんとか一本柱が立っているのがわかった。近くに行ってみると、石の他にもおもちゃや手紙など、いろいろなものが置かれている。
 
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綺麗な写真を撮りたかったが、断念。これもタイミング。私は昨日快適な宿を選んだのだ。仕方がない。ここにこれたことに感謝してお礼を伝え、その場を後にした。
 
Cruz de Ferroは観光地のようで、近くに自家用車やバスなどが駐車できるスペースもあった。そこからの下りはきれいなコンクリートの車道あり、 巡礼路はその道に沿うように整備されていた。しばらく進むと、道沿いに突然虹色の旗が現れた。そこが例のヒッピープレイスだということが、一目でわかった。
 
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 Manjarinは廃村後にたった一件残ったAlbergueだ。朝が早かったので、まだ人気はなく、中には入れなかったが、建物の前には数カ国の国旗が飾ってあったり、距離が書いてある看板が掲げられている。一番目立つのはやはり、「PEACE」と書かれている虹色の旗だ。確かThe Wayという映画にも出てきたはず。映画の中に出てくるスポット一つ一つを着実に抑えて歩いていることに、なんだか満足感があった。記念撮影をして先を急ぐ。
 
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車道沿いには牧場があり、牛たちが朝霧の中のんびりと朝食の草を食んでいる。近づいて写真を撮っても動じない。車道から巡礼者用の小道に入ると、そこは硬い岩盤の上だった。岩の表面はつるつるとしていて、滑りやすい。気をつけながら山を下ってゆく。ちょうど日の出を迎えるところだった。
 
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薄ピンク色の東の空から、強い光が溢れて、世界が一瞬にして輝きだした。朝露に濡れた草木も生き生きとして目を覚ました。だれもいない山のてっぺんで、人間はわたしたったひとり。太陽のエネルギーを一身に浴びて、身体の奥から目覚める気分だ。まるで蛹から孵るように、ぐんぐんとノビをした。あたりの山々も光が差して、一斉に起き出した。まだ遠くの山には低い位置に雲がかかり、ゆっくりと流れていった。今までも美しい景色の中で朝を迎えてきたけれど、今朝は特別だ。本当に神々しい朝。太陽が登り切ると、もう一度ゆっくりと大きく息を吸って、出発した。
 
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 ここからはものすごい角度の下り坂だった。自分がずいぶんと高い山を登ってきたんだということに、改めて気づかされた。ごろごろと大きな岩が多く、足を滑らせないように慎重に下る。膝に負担がかかっていることは承知だったが、下る以外に道がない。トレイルランのコースになっているのか、時々コースを示す旗が木々にくくりつけてあった。こんな急な坂道を走りながら登ったり、下ったりするなんて信じられない。
 
山の中腹の、Aceboという美しい村についた。ミニチュアのように可愛らしい家々が並ぶ小さな村だ。こんなに高いところに村を作り、昔は物資を運ぶのにきっと大変だっただろう。Manjarinもそうだが、このような不便なところに住居を築く人たちはいったいどんな理由があったんだろうか。思いをはせる。
 
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やっと平坦な道に出ると、何やら遠くからカランカランという乾いた音がする。それも大量に。あたりを見回しても姿は見えず、しかしどんどんと近づいてくる。これは、もしかしたら大所帯なのかもしれない・・・。そして想像していた通りのことが起こった。ガサガサと茂みが動いたと思ったら、羊の大群が道に飛び出してきた。道の真ん中にいたわたしは逃げる暇もなく、羊に囲まれてしまった。これはもう、彼らが全員通りすぎるまでここで待機するしかない。羊たちはわたしの存在を完全に無視し、巡礼路の先に一心不乱に走ってゆく。これだけたくさんの羊がいるんだもの、中には出遅れる羊もいるようで、一番最後にのんびりと歩いてきて、見回りの犬にお尻を突かれて慌てて走り出す羊もいた。そしてこの大所帯の一番最後に羊飼いの男が歩いてきて、「Hola!」とニヤリとしてつぶやいて羊のあとを追っていった。
 
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山を完全に下りきり、小さな小川を超えると、Molinasecaの町に出た。大きな川沿いの美しい町で、観光客向けの新しいホテルやレストランがあった。とても整備されていて、リゾートのようだった。休む間も無く町を出て、目的地のPonferradaの町を目指す。
 
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ここからが長かった。Ponferradaの町までは、完全に車道沿いをゆくことになる。見るものは一切なく、ひたすらに車道をゆく。途中、巡礼路は車道から左に曲がる道へ誘導されるのだが、これがひどく遠回りをさせる完全なるトラップである。車道沿いを行った場合は最短距離で町につくのだが、巡礼路はあえて遠回りをさせているようだ。町から逸れてゆく順路に一瞬不安になり引き返そうと思ったが、最終的に回りに回ってPonferradaの町にたどり着いた。
 
San Nicalas de Flueという大型のAlbergueに泊まった。到着したのは、わたしが2番だった。入り口横の壊れかけの自動販売機でビールを買って、噴水で足を冷やしながら受付開始を待った。このアルベルゲは、大きめのキッチンとダイニング、6人部屋が数十部屋ある一般的な大型のアルベルゲだった。一旦シャワーを浴びて、買い物に出かけた。なんでも揃う大きなスーパーがあり、サラダやハム、ヨーグルトなどを買い込んで宿で食べた。
 
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まだ少し元気があったので、午後は町を散策することにした。土産物屋がたくさんあり、観光案内も充実していた。巡礼割引がきくとのことで、町のシンボルでもあるお城Castillo del los Templariosを見学しに行った。国を象徴するタペストリーが掲げられた大きな門をくぐり、中へ入ると広い中庭があった。建物はすべて石造りで、とても頑丈なイメージ。城壁もしっかりと作られていて、見張り塔には国の旗が風にはためいている。わたしにとっての、中世のお城のイメージそのものだった。
 
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資料館にはお城の歴史を説明する展示や、当時の人たちの使っていた武器の展示があった。見張り塔に登り、町全体を眺めてみる。とてもいい眺め。家々の屋根や、さっき歩いてきた巡礼路が見える。そして今日越えてきた山々も遠くに見えた。観光客は少なく、とても静かだった。夜19時を過ぎ、やっとあたりが夕暮れに近づいていた。心地よい風が吹き、赤と黄色のスペインの国旗がゆらゆらと揺れている。鳥たちも家に帰るころかな。ゆっくりと変わる空を見ながら、随分と遠いところまで来てしまったんだなぁと少しだけ家が恋しくなった。
 
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