スペイン巡礼 フランス人の道 30代ひとり旅

【女性ひとり旅】32日間かけてスペイン巡礼フランス人の道を歩き、マドリッドで「暮らすように旅をする。」を実践。質問あれば、お気軽にどうぞ!

【25日目】スペイン巡礼 〜O Cebreiro

カミーノ・デ・サンティアゴ

2017/06/28

スペイン巡礼25日目

 
朝起きるとまだ雨が降っていた。濡れたまま乾いていないレインコートを羽織り、出発した。未舗装の石畳を下り、昨日散歩した町を抜け、巡礼路に出た。雨はますます強くなる。出発して20分くらいしたところで道に迷った。トンネルと抜け、1km歩いたがホタテマークがない。前を2人の巡礼者が歩いていたため、安心していたが、まんまとみんなで道を間違えたようだ。雨の中、来た道を戻る。そして先ほど通過したT字路でどうやら反対方向に曲がってしまっていたようだ。フードをすっぽりとかぶっていたため、すっかりホタテマークを見落としていた。危ない。
 
あたりが明るくなってくると、少し雨が弱まってきた。山の中の車道沿いをトボトボと歩く。頭上を通る高速道路から、滝のように水が落ちてきていた。濡れないように避けて通る。途中の小さな村の小さなバーで休憩をとった。冷えた身体に暖かいカフェコンレチェが沁みる。野良猫が寄ってきて、朝食のおこぼれをねだるが、ソーリー。今日はクロワッサンを食べていないんだ。残念そうに、他の巡礼者のテーブルにねだりに去っっていった。
 
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また濡れたレインコートを羽織り直し、出発。今日はO Cebreiroという、巡礼の最後の難関の山を登る予定だった。こんな雨の中、ぬかるんだ山道を登ると思うと今から憂鬱だった。しばらくは、山間の静かな村々を通りながら進む。生えている植物が日本と似ていて、まるで日本の山を歩いているみたい。こんな田舎の退屈な村に住んでいる若者はきっと都会に憧れているんだろうなーと、思わず自分の故郷と重ね合わせた。
 
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民家の脇道を通過しようとしたところ、庭の手入れをしているおじさんが、釜でバラの花を1本刈り取り、突然プレゼントしてくれた。予想外の出来事にあっけにとられていると、おじさんはニコっと微笑んでまた庭に戻っていった。
 
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そのうちに大きな道路に出た。トラックや自家用車など、車通りが激しく、すぐそばに寂れたサービスエリアがあった。広いパーキングに数台の車が止まっていて、古びた建物にレストランが数件あった。まるで日本みたい。スペインにもこんな廃れた場所があるんだな。そのまま通過し、いよいよO Cebreiroに近づいてきた。
 
緩やかに上り坂になったが、まだまだ山道とは言えなかった。牧場もあり、馬や羊がいた。Vega de Valcarceという村で、最後の休憩をとる。大きなマグカップに並々と入れられたカフェコンレチェがたったの1ユーロなのに驚いた。村に住む学生だろうか、若い男の子たちがバーの隅に置かれた古びたゲーム機で遊んでいた。まるでタイムスリップしたかのような、ノスタルジックな風景だった。
 
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村を出るといよいよ山道に入った。途中までは車道脇を歩くが、巡礼者用の登山道に突入すると急に景色が一変する。のんびりとしした田舎道で、きれいな小川があったり、山間の段々畑もあった。本当に日本の田舎の景色と似ている。馬の納屋も見かけたが、馬に乗って峠を越えられる運搬サービスもあるようだ。あいにく、みんな馬は出払っているよう。もう、自分の足で登るしかない。
 
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標高700mを越えたあたりから、木々が鬱蒼とした林の中の急な坂道を登る。あたりの木や岩の表面は苔むしていて、きのこも生えている。道には大きさの違うゴロゴロした石が散乱していて、足元が非常に悪い。傾斜もきつく、重心を前に置かないと進めないほど。日のあたりも悪いので、濡れた地面はぬかるみが激しく、最悪の状態。こんな道を30分以上歩いた。何度も何度も、「もう無理」と声に出して言いながら、登った。ぜぇぜぇと息を切らせながら、一歩一歩重い足を前に出しながら進んだ。 
 
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そしてやっと目の前が開けて、小さな民家が現れた。その脇を抜けると、小道に出て、バーの看板が見えた。何も考えずにとりあえず、駆け込み、無意識にビールを一杯オーダー。テーブルに座ると、「やった、、、登りきった」と実感できた。若い女性が何人か働いていて、愛想もいい。まるでビールを運んできてくれる天使だ。周りの巡礼者たちも一仕事終えた感にあふれていて、カフェとケーキを楽しいでいる。でも、難所はまだまだこれから。
 
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もうここに泊まろうかな、と諦めかけるくらい今日を終えた感があったが、峠はまだ先だ。重い重い腰を上げて、道を進む。民家もなくなり、高原のような景色の中に突入した。背の高い木も生えないほど、標高が上がってきたということか。遮るものがないので、風がかなり強い。レインコートがバサバサと揺れてめくれ上がり、意味をなしていない。
 
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目の前には牧場のような草原が広がっており、牛と牛飼いが強風の中放牧していた。山のてっぺんに近づいてきたのか、空もすごく近くに感じる。雲の流れもものすごく早くて、真っ青な空が見えたり、またどんよりとした雲に覆われたり、変化が激しい。
 
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そしてついに、Galicia州に入った。州が山をまたいでいるのか。ナバラ州、リオハ州、レオン州と歩いてきて、ついに最後の州に突入したのだ。おもわず「うおーーーー」と叫んでみた。声はすぐに風にかき消されて消えた。地味に感極まったが、「長かったー、やっとここまで来たーーーー」というのが、峠を越し掛けた私の率直な感想だった。
 
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そして今夜の目的地O cebreiroの頂上の村についた。山の頂上にしては小綺麗な石造りの建物が並び、小さな教会もあった。
 
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昔の住居をそのまま見学できる資料館のようなものもあった。ここでも思うのが、なぜわざわざこんな山のてっぺんの不便な場所に住もうと決心したのか。昔の人の思いと、事情がはかり知れない。  
 
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村の一番隅にあるAlbergueに受付した。ここは100人収容規模の大きな宿で、大部屋に数十台の二段ベッドが並んでいた。ここで初めて体験したのが、完全個室になっていないシャワールームだ。ドアがついていない個室で、まるでプールのシャワーのよう。みんなに裸をみられながらシャワーを浴びるスタイル。銭湯や温泉に慣れている日本人でも最初少し躊躇した。周りの様子をうかがうと、西洋人は得に気にせず普通に浴びていた。
 
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かなり身体が冷えていたので、シャワーの後はしばらくベッドで寝袋にくるまって暖をとった。もちろんエアコンなどはないので、部屋はかなり冷えていた。この宿の難点は、立派なキッチンがあるのに、キッチン用具がまったくないことだ。お湯すら沸かすことができない。おそらく巡礼者の誰かが置いていったとおもわれる、フライパンが一つ引き出しに入っていた。そのフライパンを使い、湯を沸かし、お茶を入れてみた。私は缶詰めとパンとサラミを持参していたので、なんとか空腹をしのげたが、スーパーもなく、バーが一件だけ。みんな同じバーに行くしかないようだ。バーでテイクアウトしたサンドイッチを見せてもらったが、硬いフランスパンにハムが1、2枚挟んであるだけの質素なものだった。そのサンドイッチ1つを夫婦で分け合い、静かなキッチンの隅で黙って食べているのが何とも言えない寂しい風景だった。
 
その夜も激しい雨風が一晩中続いた。晴れていたら山の頂上で見る星空は最高だったろうに。ピレネーといい、オセブレイロといい、私の峠越えは本当に天気に恵まれない。でもその分、すばらしいお祭りや朝焼けを何度もみれてここまで来れたので後悔はしていない。すべては自分に与えられたものだと思って、素直に受け止めて道を進むしかないのだ。
 
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(↑宿からの景色。晴れているように見えるが、冷たい雨が強風に混ざって吹き付けている。)