スペイン巡礼 フランス人の道 30代ひとり旅

【女性ひとり旅】32日間かけてスペイン巡礼フランス人の道を歩き、マドリッドで「暮らすように旅をする。」を実践。質問あれば、お気軽にどうぞ!

【番外編1】スペイン巡礼〜Fisterra

カミーノ・デ・サンティアゴの巡礼を終えた翌日、例に習いフィステーラ岬へ行くことにした。巡礼を終えた者はサンティアゴからさらに2、3日かけて歩き、スペインの西の果てのフィステーラの町へ行くことは、巡礼本や、映画でも通例となっている。私の旅欲は完全に近いほど失くなってしまったため、”歩く”という選択肢はほぼなかった。そんな人のために、フィステーラへの直通バスが1日に数本出ており、日帰りでも行くことが可能だ。カテドラルのある旧市街から歩いて15分ほどで、バスターミナルへ到着した。
 
窓口でチケットを買い、指定された番号の乗り場へ行くと、既に巡礼者たちが列をなしていた。バスは案の定満席。私は巡礼を終えたその日に町のブティックへ行き、新しい靴とワンピース、それに麦わら帽子まで調達していた。もはやリゾートへの小旅行気分だ。そんなリゾートチックな装いの者は私だけで、皆巡礼中と同じようにTシャツに短パン、バックパックを背負っていた。
 
フィステーラまでは約1時間半。サンティアゴを出発するとすぐにのどかな風景の田舎道に入り、フィステーラ岬を歩いて目指す巡礼者たちが道沿いを歩いていた。私の気持ちとしては、”バスを選んで正解”というのが本音だった。それくらい、巡礼はすでに”終わった”ことだった。目標を達成してしまった今、次の目標を何に設定しようか、移り変わる車窓を眺めながらそんなことをぼんやりと考えていた。
 
あっという間にフィステーラの町についた。バスはヨットや小型の白い船がいくつも碇泊している、小さなマリーナのすぐそばの停留所に泊まった。
 
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マリーナを囲むようにシーフードレストランが立ち並び、そこは文字通りヨーロッパの小さなリゾート町だった。どのお店も店先にテーブルと椅子が並ぶテラス席があり、青空のもとキラキラした海を眺めながら優雅にシーフードと白ワインを楽しんでいた。こじんまりとしたとても雰囲気の良いマリーナだった。
 
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マリーナのすぐそばには小さなビーチもあり、白い砂浜にびっくりするぐらいエメラルドグリーンの海が広がっていた。地元の子供たち数人と、少しの観光客がのんびりと砂浜に座り、海を眺めていた。本当に時がゆっくりと流れているような、そんな景色だった。
 
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さぁ、宿に向かおう。あらかじめBooking.comで予約していた宿は少し山を登ったところにある。海からは少し離れるが、ネットで見たその宿はとても雰囲気がよさそうだった。賑やかなマリーナを離れ裏通りに入ると洗練された観光地とはうって変わり、閑散としていて質素な建物が並ぶ住宅街だった。コンクリートの壁にはヒビが入り、木製のドアは長年の塩害からか完全に朽ちていた。しかしまったく暗く寂しい雰囲気ではなく、通りは明るくそして人が暮らしているとう安心に近い印象だった。通りには全く人気はないが、開いた窓の中からテレビの音が漏れていたり、そんなのんびりとした時間が流れている。
 
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宿は思っていたよりも、山の上の方にあった。地図もあいまいで、歩いても歩いてもみつからない。”Mar de Fora"という地名だけが頼りだった。どんどんと海から離れ、眺めがよくなっていく。空は澄み切って青く、日差しを全身に浴びながら山を登っていく。やっと見つけた宿は、住宅街の真ん中にあった。管理人さんは土足の室内を裸足で歩いていて、海の近くに住む人という感じがした。今までお世話になってきたAlberugueの管理人たちとは明らかに違っていて、それはそれでのんびりとした安心感があった。一応Albergueなので、クレデンシャルにはスタンプを押してくれた。
 
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宿は二階建ての一軒家のようで、二階の部屋に案内された。空いていたので、二段ベッドの下段にしてくれた。久しぶりだ。フィステーラ岬へは夕焼けを見に行く予定だった。宿に戻るのが遅くなりそうだが、何時までに戻ればよういかと管理人に聞くと、なんと宿は施錠しないので何時に戻ってもよいとのこと。今夜の日の入りは夜10時なので、20時頃に出ていけば十分に間に合うと教えてくれた。スーパーでワインとパンとサラミを買い、19時頃に出かけた。今夜は岬でピクニックだ。
 
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岬へは歩いて30分ほどかかるが、車道沿いの一本道なのでみんなそぞろ歩きで岬を目指す。途中、巡礼者の銅像などもあった。
 
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岬に着くと、観光バスの駐車スペースなどもあり、完全なる観光地だった。まだ人は少なかったが、見晴のよい芝生スペースや、テーブルと椅子のあるピクニックスペースは結構埋まりつつだった。とりあえず、灯台のある岬まで行ってみることにした。灯台の横を通り過ぎようとしたとき、ホタテマークの石碑があった。そこには、「0km」とある。一ヶ月以上前に、800kmからスタートしたこの旅の終着地点を意味していた。ずっと追いかけてきた、ホタテのマークが、ついにこの最後の一つで完全に終わった。その石碑が私にとってはとても重要な、終わりを証明してくれるものであることは間違いなかった。
 
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 ゴツゴツとした岩場まで出た。目の前には、まさに”スペインの西の果て”、真っ青な大西洋が広がっていた。海からの風で、ワンピースの裾が広がった。ついに、ここに来たんだ。なんだか、サンティアゴに着いたときよりも、よっぽど達成感があった。青い海と、青い空と、海から吹き上げる風が私に清々しい気持ちを与えてくれた。ついに終わったんだ・・・。
 
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 岩場の下の方に、巡礼者たちが自らが身につけていた服や持ち物を燃やしたと言われるスペースがあった。今は危ないので火気厳禁だが、誰かが燃やしたであろう炭の後が残っていた。
 
できるだけ平らなスペースを探し、腰を下ろした。白ワインとサラミで祝杯をあげた。あたりはまだまだ明るかったが、風が吹き、少し肌寒かった。2時間後、まわりにはいつの間にかたくさんの人たちが腰を下ろしていて、岩場が人で埋まっていた。 真っ白な太陽が今日の役目を終えて、静かに地平線の向こうに沈んでいった。みんな、それぞれの気持ちで夕日を見つめていた。家族みんなで見つめる人、恋人と見つめる人、そして一人で見つめる人。いつまでもいつまでも、見つめていた。それぞれの明日を見つめていた。
 
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