スペイン巡礼 フランス人の道 30代ひとり旅

【女性ひとり旅】32日間かけてスペイン巡礼フランス人の道を歩き、マドリッドで「暮らすように旅をする。」を実践。質問あれば、お気軽にどうぞ!

【番外編2】スペイン巡礼〜Muxia

朝、寝坊しようとしたのに、結局早起きしてしまうのは、32日間4時起きした癖が抜けないからかな。ここは巡礼の終着地点、フィステーラ岬だ。先を急ぐものはいない。

 
1階へ降りていくと、何人かが朝食をとっていた。朝食は寄付制で、トーストやフルーツ、コーヒーなどが置いてある。みんなどことなくゆったりと、ゆっくりと頂いている。今朝は少し曇り空で肌寒い。ストールを羽織って、散歩に出てみる。山の中腹にあるこの宿の周りは坂道に民家が点在している。宿のダイニングに飾られた大きな地図を見る限り、丘を越えるとビーチがあるようだ。いってみよう。
 
まるで夏休みに訪れた孤島のように、海岸に続く道には誰も歩いていなくて、まだ海は見えないのに潮風を感じる。時間が静かにゆったりと流れていて、まだ巡礼の余韻から冷めない心と疲れた身体にこの静けさが染み渡った。
 
丘を登り、下っていくと、目の前にビーチと海が現れた。整備された長いボードウォークもあり砂浜は歩きやすく、砂地に咲いた乾いた植物や花がきれいだった。真っ青な海からは絶え間なく荒々しい波が打ち付け、ビーチには誰一人いなかった。本当に静かなビーチだ。砂浜に腰を下ろして、しばらく海を眺めていた。
 
寂しいビーチが好き。今まで訪れた数々のビーチの中でもここは格別だった。「世界はわたしだけのもの。」巡礼中に幾度となく味わった、わたしだけの世界がここフィステーラにもあった。視界に入る景色の中に人間はわたしたった一人、あとは自然だけ。日本にいたらなかなか作り出すことができない瞬間だからこそ、大切に味わいたい 瞬間だった。
 
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しばらくぼーっと海を眺めていると、大きなハスキーが走ってきた。その後ろに若い男性が続いてあるいてきた。ランニング途中なのか、スポーツウェアを羽織り、耳にイアホンがみえた。男性と犬は、わたしの存在に気付いたか否か、そのままビーチへと歩いていった。二人の姿が小さくなるにつれて、霞んでみえた。強い潮風のせいか。こんな静かなビーチを毎日ランニングコースとして走れるのかと思うと、羨ましかった。
 
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バスの時間が迫っていたので、ビーチをあとにした。1日滞在しただけなのに、とても愛着が湧いてしまったアルベルゲにもお別れを言い、最初に降り立ったバス停に向かった。山を降りていくと、そこには昨日降り立った観光地のフィステーラの町があった。巡礼者や観光客がバスを待っていて、混雑していた。現実に引き戻される。こんなにも雰囲気が違う場所が同じ地域にあるのが不思議だった。
 
時間通りにバスに乗り込み、今日はMuxia(ムシア)に向かう。ムシアは海沿いの小さな町で、行ってみたい町の一つだった。この辺りの海岸は入り組んでいて、バスはその海岸沿いを地形に沿って進む。40分ほどでムシアの町についた。
 
ついたバス停は、また海沿いの小さなレストランが並ぶこれまた小さなマリーナにあった。小雨が降っていて、薄暗かったせいか、とても寂しい港町にみえた。まずは予約していた宿を目指す。ここも少し高台にあり、美しい夕日が見られると有名な場所だった。こんな天気じゃ、今夜は夕日は諦めるしかなさそうだ。
 
住宅街にある宿に到着したのはまだお昼を過ぎたころだった。少し早いがチェックインできるか聞いてみると、管理人はまだ掃除中だった。「まだ少しかかるけど・・」と掃除の手を止めて、受付に対応してくれた。温かみのある木製のキッチンと、まるで住み慣れた実家の様な感覚に陥るふかふかのソファーがあるリビング、そして寝室の壁はきれいな鮮やかな水色に塗られ、真新しい白い二段ベッドが数台並んでいた。こんな洋風な家には住んだことはないが、まるで家に帰ってきたような落ち着く空間だった。一瞬にしてこの宿のファンになってしまった。こんな宿をわたしも運営してみたい、そんな夢が広がる素敵な場所だった。
 
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バルコニーに出ると、目の前には黒い海が広がっていた。湿った潮風が顔に当たり、海の匂いをいっぱいに吸い込んだ。晴れていればきっと素晴らしい景色だっただろうけど、この黒く寂しい海は嫌いではなかった。カモメの鳴き声が、寂しさを増幅させた。
 
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雨がやんだので、散歩に出かけることにした。時間はたっぷりとある。が、宿で地図をみる限り、この半島は1時間程度で回れてしまいそうだった。海沿いを歩いていくと、巡礼のシンボル、ホタテマークのある石碑があった。山を越え、丘を越え、内陸部をひたすらと進むフランス人の道を歩いてきたので、この石碑が海沿いに立っているのは不思議な感じがした。
 
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堤防にはリアルな脱ぎっぱなしのコンバースを模したオブジェが。文字通り、脱ぎ捨てられているが、素材は硬いコンクリートのようだった。ビーチはなく、ゴツゴツとした黒い岩の磯が続く。岬の先に出ると、また石の大きなオブジェがあり、その先に教会もあった。天気が悪いので、どの景色を切り取っても暗く、寂しい印象だった。
 
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教会の裏の丘に登っていみる。頂上には大きな十字架があり、その先からムシアの町を見渡すことができた。オレンジ色の屋根が並ぶ、小さな小さな町だった。

 

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ヨーロッパのはしっこの、絵本に出てくるみたいに小さな港町の、小さな丘の上に立って、曇天を仰ぐ。ついに、行くところがなくなってしまった。今夜ムシアでの一晩を過ごしたら、明日行くべき場所がもうない。完全に、この旅が終わりを迎える。ずいぶんと遠くまできてしまったけど、ここからまた新しい旅に向かって準備を進めよう。

 

 

 

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