スペイン巡礼 フランス人の道 30代ひとり旅

【女性ひとり旅】32日間かけてスペイン巡礼フランス人の道を歩き、マドリッドで「暮らすように旅をする。」を実践。質問あれば、お気軽にどうぞ!

【暮らすように旅をする。】〜Madrid Life(1)

「暮らすように旅をする。」それは長年体験してみたいことの一つだった。通常の旅行はどうしても短期間に様々な予定を詰め込みすぎてしまう。有名な観光地に、美術館めぐり、人気のレストランはマストだし、加えてせっかく予約したホテルも満喫し尽くしたい。全部をクリアしようとしたら、サラリーマンに与えられた1週間程度の休暇では足りるはずがない。今回はそんなしがらみを捨てて、思い切って会社を辞めて、ストレスフリーでスペインにきた。巡礼を終えた今、次にトライするのはこれしかない。「暮らすように旅をする。」のだ。

 
スペインの西の果て、Muxiaからバスでサンティアゴコンポステーラに戻り、夜行の長距離バスに乗り換え10時間以上かけてMadridに戻ってきた。ちなみに7月初めは巡礼のオンシーズンだっため、サンティアゴコンポステーラからマドリッドへのバスは前日時点でほぼ満席の状態だった。わたしはギリギリ窓口でチケットが買えた。窓口で巡礼証明書を見せると、巡礼者割引が使え、バスの料金は半額になる。800kmを歩ききったご褒美だ。
 
巡礼後3日程度はゆっくり眠り疲れは取れつつあったといっても、ほぼフラットシートの10時間座りっぱなしは流石にきつかった。翌朝7時頃にマドリッドに着く頃は、寝不足と腰痛でぐったりとしていた。ここは、一ヶ月前にフランスとの国境の町サンジャンピエドポーに向かって出発したバスターミナルだ。一ヶ月たち、わたしは何か変わっただろうか。だだっ広いバスターミナルの廊下の大きな窓から差し込む、ギラギラとした朝日がまぶしかった。
 
当たり前だがマドリッドは都会だった。ターミナルの窓から見える景色は、巡礼中に歩いていたスペインのド田舎とは全く違っていて、目の前を歩く人もどこか生き急ぎ、慌しかった。が、そろそろ刺激が欲しくなっていた私には、そんな慌ただしさにすでにワクワクしていた。
 
さて、どうしようか。こんな早朝に街へ出てもお店もやっていないし、ホテルにも宿にもチェックインできない。ターミナルのベンチでコーヒーを飲みながら、今日の予定をたてる。何時にどこへいき、何かをしなきゃ時間がもったいないってことは全く心配しなくてもいいのだ。この街はしばらく、”私が暮らす街”になるのだから。
 
8時半過ぎ、やっとベンチから腰を上げ、地下鉄に乗り込む。向かったのは、Atocha駅だ。そう、マドリッドの三大美術館の一つ、プラド美術館に向かうことにした。
 
Atocha駅は複数の路線が乗り入れる、大きな駅だった。観光客も多く利用するが、繁華街も近いので市民も多く利用するような賑やかな駅だった。地下鉄から地上に出ると、交通量も多く、大きな交差点にはデカデカとマックもあり、The都会のド真ん中、という印象。交差点の先には大きな公園の緑が見え、直感で美術館のある方向であることがわかった。
 
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公園を囲む黒い鉄柵が高くそびえ立ち、荘厳な感じがした。柵に沿って進むと、ものすごく丁寧に手入れされた緑の公園が現れた。広い歩道に、背の高い街路樹が整備され、宮殿の庭を歩いているようだ。すぐに見えてきた石づくりの大きな建物が、プラド美術館だった。
 
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情報によると土日は早朝から長蛇の列で相当混んでいるそうだが、今日は平日で、そして美術館のオープン時間直後だった。それでも入り口には数十人がチケットを買うために並んでいた。チケットを買い、無料のロッカーにバックパックを預け、広い広い美術館のエントランスをくぐった。
 
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最初の部屋から、ビル2階ほどの高さがありそうな巨大なサイズの絵画が飾られている。そのスケールに圧倒される。ちなみに、わたしはアートに全く詳しくなく、日本では数年に1度位程度しか美術館には通わない。そんな知識のない私も今回の滞在を機に、いろいろなアートに触れてみることにした。
 
実に様々な年代、アーティスト、ジャンルの作品があった。広すぎて、どの部屋を見たのか、見きれていないのか、見失ってしまうほど。それでもその絵に対して、自分が何を思うのか、どう感じるのかに集中して、一つ一つ見ていった。わたしが感じ、自分で驚いたことの一つに、昔のヨーロッパの風景と人物を描いた絵に関して、あまりにも身近に感じだことだった。巡礼中はスペインの田舎町をひたすらに歩き、おそらく数百年前からちっとも変わっていないであろう自然の風景を幾度も見てきた。さらに巡礼宿では多くのヨーロッパ人と暮らし、その顔や素肌を身近で見てきた。それだからか、絵の中に広がる景色や、ヨーロッパ人の表情や皮膚の感じがあまりにもリアルに思えてしまうのだ。さらに、こんな景色みたかもしれないと思うものもたくさんあった。おそらくスペインだけじゃなくて、フランスやイタリアの作品もあっただろうけど、山や土壌や植物の感じはそう変わらないからか、「こんなところ歩いたような・・・」と思える瞬間がたくさんあり、絵のかなり細かい部分まで集中してみることができたと思う。巡礼がアート鑑賞にこんなに影響するのが、可笑しかったし、こうやって自分の感性を変えてくれた巡礼に感謝した。
 
プラド美術館を2時間半以上かけてゆっくりと見てから、宿に向かった。今回滞在中お世話になるのは、巡礼中と同じくたくさんの人と相部屋を共有するタイプのユースホステルだ。神経質な人には理解できないかもしれないが、こんな生活にももう慣れたものだ。ここは美術館からも近く、繁華街へも歩いていけるので非常に便利な場所だった。細長いビル一本が全てユースホステルになっており、リビングにキッチン、ランドリールーム、そして中庭もあった。この四方を壁に囲まれた中庭が心地よくて、よく夕方はビールを飲みながらのんびりと過ごした。就寝室も淡い薄紫の壁に、白いきれいなベッドで(今回は布団もあるから寝袋は不要!)、マドリッドの暑さから解放してくれる空調も整っていてかなり快適な空間だった。
 
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しばらくの間わたしの暮らしの拠点となるここはまずまず。楽しいマドリッドライフが始まる予感がした。