【暮らすように旅をする。】〜Madrid Life (2)
スペインで髪を切るというチャレンジングなことをしてみる。「暮らすように旅をする。」をテーマに滞在したマドリッドでの二日目、ヘアサロンで髪を切ることにした。
スペイン巡礼前、いろいろなブログを見ながら必要なものを揃えていった。その工程は楽しく、自分自身に本当に必要なものはなんなのか、と真剣に考えるよい機会だった。そんなわたしが「これ以上不要なものはない!」と断言して揃えたグッズはこちらから。→
http://lifeiseasy.hatenadiary.com/entry/2017/07/20/183006
厳選に厳選を重ねた完璧なグッズを背負いスタートした巡礼だったが、スペイン巡礼二日目にして早速あるものを捨てた。
それが、シャンプーだった。
なるべくかさばる重いものは持ち歩かないようにと考えていたため、液体で重量のそこそこあるシャンプーやリンスは悩みの種だった。とあるブログに書いてあったおすすめのシャンプーが、「リンスのいらないメリット」だった。日本人なら誰でもしっている(と思われる)、リンスインシャンプー。わたしが幼いころからあったロングセラー商品(だけど、ここ数十年は買っていない)が、巡礼で役に立つなんて!
日本で薬局を数件廻り、小さなボトルの「メリット」を探し出した。多少髪がパサつこうと関係ない。これさえあれば、巡礼中のシャワーも快適なものになる、と疑わなかった。
そして巡礼初日。
シャンジャンピエドポーから死ぬ思いでピレネーの峠越えをして、早速自分のバックパックと向き合うことになった。自分の荷物は重すぎると・・・。
何か捨てなければと、完璧だと思われていたカミーノグッズをカバンから全て取り出し、狭い二段ベッドに並べて考えてみた。その結果、泣く泣く選ばれたのが「リンスのいらないメリット」だった。使用したのはたったの2回。他に捨てられるものが全くなく、宿に置いていくことにしたのだ。まさに、メリットを感じる前に、「メリット」とはお別れをした。
シャンプーなしでこの先どうやって髪を洗っていったかというと、それは簡単。シャンプーをしない、という選択だ。正確にいうと、なんらかの化学物質を使用せずに、お湯だけで髪を洗うという選択。俗にいう、「湯シャン」。
ここまでシンプルになったか、と自分自信が誇らしく思えた。これぞカミーノ。最初は頭が臭くならないか心配だったが、シャワーの際に指の腹でマッサージするように丁寧に洗っていったので、巡礼中に痒みやフケに悩まされることは一切なかった。一度石鹸で髪を洗ったことがあって、その時は本当に災難だった。髪がゴワつき、自然乾燥したときに広がって大変なことになった。それ以来、湯シャン一本で一ヶ月を過ごした。
一ヶ月間、まさに修行僧のようにシンプルライフを過ごし、身も心もストレスフリーになったのだが、サンティアゴから都会のマドリッドに帰ってきて、なんだか修行僧の自分の姿が街から浮いているような気がして、居心地の悪さを感じた。カミーノマジックは巡礼路でないと通用しないのかな?そんなことはない、あの素晴らしい旅を思い出せば、いつでも歩いていた頃の気持ちに戻れるのだ。
とはいいつつも、一ヶ月間の湯シャンで酷使したわたしのロングヘアーは退色と乾燥でひどい状態になっていた。どうせならマドリッドのアーバンライフを楽しみたいので、ヘアサロンに行ってみることにした。
旅行中に髪を切るという経験は今までないけれど、今回は暮らすように旅をしているので、街のヘアサロンに行くのはこの旅の醍醐味だろう。まずはグーグルでホステルの近くのヘアサロンを検索してみた。いくつかのヘアサロンがヒットし、口コミもあった。口コミをチェックしてみると、やはり大都会なだけあって海外からマドリッドに仕事で滞在している人が多いようで、わたしと同じようにヘアサロン難民がたくさんコメントしていた。よさそうな所を見つけ、地図で距離をチェックし、サロンのホームページから予約ができるか聞いてみた。
15分で返事がきて、ほぼチャットのようなやり取りをして、3時間後に予約ができた。なんて便利な世の中なんでしょう。スペインにもきっと探したらホットペッパービューティーのようなサイトがあるんでしょうね。
ホステルから歩いてサロンまで向かう。今日もよく晴れているマドリッド。サングラスが欠かせない。大都会なんだけれど、石造りの建物も多く、ヨーロッパにいることを感じさせてくれる。
サロンはゲイフレンドリーな地区にあった。6月に行われたワールドプライドの名残か、通り沿いのお店にはたくさんのレインボーフラッグが掲げられている。
出迎えてくれたのは、アジア人の女性。英語で接客してくれる。サロン台に通され、どんな髪型にしたいのか、どんな色にするのか。詳しく聞いてくれた。面白いのが、最初にケーキとお茶を出してくれるのだ。これはなかなか日本にはないサービス。とても可愛らしい女性だったので、どこからきているのか聞いてみると、彼女は香港出身で、旦那さんがイギリス人なんだとか。留学先のイギリスで旦那様と出会い、結婚してから旦那様のお仕事の都合でスペインにやってきたんだそう。なんともグローバルな人生。軽やかに生きている姿が、とても素敵だった。
しばらくすると、ブロンドで強面な感じのスペイン人の女性がやってきて、どうやらこの人が実際にカラーリングをしてくれるようだ。彼女は英語が喋れないので、受付の女性がスペイン語を英語に翻訳してくれる。
本当は毛先だけブリーチしたかったんだけれど、カラーリストの女性が15時に帰るので時間がなくて無理、と言われ(笑)、結局普通にカラーリングすることになった。美容師さんの都合がお客さんのオーダーより優先されるところが、労働者の権利が守られている欧州らしい。郷に従うことにした。
カラーリングが始まると、まずカラー剤が服につかないよう、ゴミ袋みたいな赤いビニールのケープをかけてくれる。自分の滑稽な姿に笑えてきた。カラーの工程はほぼ日本と一緒だった。カラー剤を塗る時の髪のブロッキングが日本でやるよりも細く丁寧な気がした。彼女は日本語はもちろん英語も喋れないので、コミュニケーションは不可。ただ黙ってたんたんと仕事をしてくれる。
カラーの待ち時間が終わり、シャンプーをしてくれたのだが、ん・・・?ぬるい・・・、お湯がぬるいのだ。いや、もはや冷たい。言いたいけど、スペイン語がわからず、黙って耐えた。雑に髪をタオルドライしたあと、ブローもお願いした。コームとドライヤーを使い、丁寧にブローしてくれる。大げさにいうと、80年代のトレンディドラマ女優のような。優雅に風に吹かれる前髪に仕上げてくた。彼女も自分の仕事に満足そうだ。
お支払いはカードで、70ユーロ。日本と同じくらいの金額かな。はじめてのスペインでの美容院体験は、金額もカラーのクオリティも満足いくものだった。「暮らすように旅をする。」をテーマにしたマドリッド生活でまた一つ、日常の体験ができた。