【暮らすように旅をする。】〜Madrid Life (3)
真夏のスペイン・マドリッド。この凄まじい日差しから逃れる方法はないか。いや、輝く夏のヨーロッパを楽しみつくす方法はないか。
そうだ、プールにいこう。
巡礼中は山の中や大草原を闊歩していたので、水辺には無縁だった。サンティアゴデコンポステーラからフィステーラ岬へ向かい、大西洋を目の前にした時はこの上ない感動を味わったが、当たり前だけれどその勢いで海に飛び込むことはなかった。
マドリッドは巡礼路よりもさらに内陸側だ。大都会で憩いのプールを探す。が、探せど探せど無いのだ。グーグルの欠陥かと疑いたくなるほど。
マドリッド市民に、「みんなどうやって暑さ凌いでいるの?」と聞くと、店先のノズルから随時発射されている細やかなミストを腕を広げて浴びながら" We have!! " と言われた。呆れる。
色んなサイトをサーチしながら、やっと見つけたのがマドリッドの市民プール。そんなに大きくは無いが、屋外の競泳用プールで一般にも解放している模様。歩いて30分くらいで行けそうなので、朝から早起きして散歩がてらに行ってみることにした。
朝8時に出発したのに、もうすでに日差しが痛い。街中をしばらく歩き、王宮やアテナス公園の横を通り過ぎ、ビル群を抜けると、大きな川に出た。車道脇の歩道を歩いていくのだが、こんな炎天下の中を歩く者はわたし以外誰一人としていない。
方向としては、マドリッドアリーナの近くのようだ。近くのスーパーでビールとスナックを買い込み、市民プールのある学校の敷地内に入る。
受付を発見。朝9時というのに、すでに数人が並んでいる。入場チケットはなんと4ユーロ(520円)。本当に市民価格!
中に入ると最初に通過するのが男女分かれている更衣室。日本のプールと同じくロッカーやトイレやシャワーがある。がしかし、シャワーは個室タイプでなく、壁からシャワーヘッドがにょきっと出ているだけのシンプルなもの。すでに素っ裸のおばちゃんがシャワーを浴びていた。
更衣室を抜けると、想像もしていなかった市民プールが現れた。確かに競泳用のプールなのだが、プールサイドにはたくさんの人がシートやバスタオルを敷いて寝そべり、日光浴をしている。
よく見ると、女性たちがビキニのブラトップを外し半裸でウロウロとしている。そう、ここはトップレスOKな市民プールなのだ。なんてフリーダムな環境なんだろう。
あまりにも日差しが強すぎて、芝生の日陰に陣取り、わたしもサンティアゴで買った大判ストールを広げた。ごろんと寝転がり、買ってきたビールを開ける。平日の昼間から、ヨーロッパの大都会で自堕落に過ごすわたし。最高だ!
それにしても男性陣はトップレス女子たちに対しまったく気にしていない。隣にいたファミリーのパパに聞いてみると、スペインでは大して珍しい光景ではないそう。ゲイの人たちもよく来るそうで、6月のプライドシーズンは" 超Gayishプール "になるそうだ。なんてフレンドリーな街なんだろう。
この小さな敷地内だけで本当に多種多様な人たちがいる。こんなにも明るくて水面がキラキラと輝いて鮮やかな景色は、太陽のせいだけでもなさそうだ。多様な人たちが、自分らしく、そしてお互いの存在を受け入れ、尊重し合って暮らしている。またMadridのすばらしい魅力を一つ見つけてしまった。