スペイン巡礼 フランス人の道 2017

30日間かけて、スペイン巡礼フランス人の道を歩きました!質問あれば、お気軽にどうぞ!

【暮らすように旅をする。】〜Madrid Life

「暮らすように旅をする。」それは長年体験してみたいことの一つだった。通常の旅行はどうしても短期間に様々な予定を詰め込みすぎてしまう。有名な観光地に、美術館めぐり、人気のレストランはマストだし、加えてせっかく予約したホテルも満喫し尽くしたい。全部をクリアしようとしたら、サラリーマンに与えられた1週間程度の休暇では足りるはずがない。今回はそんなしがらみを捨てて、思い切って会社を辞めて、ストレスフリーでスペインにきた。巡礼を終えた今、次にトライするのはこれしかない。「暮らすように旅をする。」のだ。

 
スペインの西の果て、Muxiaからバスでサンティアゴコンポステーラに戻り、夜行の長距離バスに乗り換え10時間以上かけてMadridに戻ってきた。ちなみに7月初めは巡礼のオンシーズンだっため、サンティアゴコンポステーラからマドリッドへのバスは前日時点でほぼ満席の状態だった。わたしはギリギリ窓口でチケットが買えた。窓口で巡礼証明書を見せると、巡礼者割引が使え、バスの料金は半額になる。800kmを歩ききったご褒美だ。
 
巡礼後3日程度はゆっくり眠り疲れは取れつつあったといっても、ほぼフラットシートの10時間座りっぱなしは流石にきつかった。翌朝7時頃にマドリッドに着く頃は、寝不足と腰痛でぐったりとしていた。ここは、一ヶ月前にフランスとの国境の町サンジャンピエドポーに向かって出発したバスターミナルだ。一ヶ月たち、わたしは何か変わっただろうか。だだっ広いバスターミナルの廊下の大きな窓から差し込む、ギラギラとした朝日がまぶしかった。
 
当たり前だがマドリッドは都会だった。ターミナルの窓から見える景色は、巡礼中に歩いていたスペインのド田舎とは全く違っていて、目の前を歩く人もどこか生き急ぎ、慌しかった。が、そろそろ刺激が欲しくなっていた私には、そんな慌ただしさにすでにワクワクしていた。
 
さて、どうしようか。こんな早朝に街へ出てもお店もやっていないし、ホテルにも宿にもチェックインできない。ターミナルのベンチでコーヒーを飲みながら、今日の予定をたてる。何時にどこへいき、何かをしなきゃ時間がもったいないってことは全く心配しなくてもいいのだ。この街はしばらく、”私が暮らす街”になるのだから。
 
8時半過ぎ、やっとベンチから腰を上げ、地下鉄に乗り込む。向かったのは、Atocha駅だ。そう、マドリッドの三大美術館の一つ、プラド美術館に向かうことにした。
 
Atocha駅は複数の路線が乗り入れる、大きな駅だった。観光客も多く利用するが、繁華街も近いので市民も多く利用するような賑やかな駅だった。地下鉄から地上に出ると、交通量も多く、大きな交差点にはデカデカとマックもあり、The都会のド真ん中、という印象。交差点の先には大きな公園の緑が見え、直感で美術館のある方向であることがわかった。
 
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公園を囲む黒い鉄柵が高くそびえ立ち、荘厳な感じがした。柵に沿って進むと、ものすごく丁寧に手入れされた緑の公園が現れた。広い歩道に、背の高い街路樹が整備され、宮殿の庭を歩いているようだ。すぐに見えてきた石づくりの大きな建物が、プラド美術館だった。
 
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情報によると土日は早朝から長蛇の列で相当混んでいるそうだが、今日は平日で、そして美術館のオープン時間直後だった。それでも入り口には数十人がチケットを買うために並んでいた。チケットを買い、無料のロッカーにバックパックを預け、広い広い美術館のエントランスをくぐった。
 
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最初の部屋から、ビル2階ほどの高さがありそうな巨大なサイズの絵画が飾られている。そのスケールに圧倒される。ちなみに、わたしはアートに全く詳しくなく、日本では数年に1度位程度しか美術館には通わない。そんな知識のない私も今回の滞在を機に、いろいろなアートに触れてみることにした。
 
実に様々な年代、アーティスト、ジャンルの作品があった。広すぎて、どの部屋を見たのか、見きれていないのか、見失ってしまうほど。それでもその絵に対して、自分が何を思うのか、どう感じるのかに集中して、一つ一つ見ていった。わたしが感じ、自分で驚いたことの一つに、昔のヨーロッパの風景と人物を描いた絵に関して、あまりにも身近に感じだことだった。巡礼中はスペインの田舎町をひたすらに歩き、おそらく数百年前からちっとも変わっていないであろう自然の風景を幾度も見てきた。さらに巡礼宿では多くのヨーロッパ人と暮らし、その顔や素肌を身近で見てきた。それだからか、絵の中に広がる景色や、ヨーロッパ人の表情や皮膚の感じがあまりにもリアルに思えてしまうのだ。さらに、こんな景色みたかもしれないと思うものもたくさんあった。おそらくスペインだけじゃなくて、フランスやイタリアの作品もあっただろうけど、山や土壌や植物の感じはそう変わらないからか、「こんなところ歩いたような・・・」と思える瞬間がたくさんあり、絵のかなり細かい部分まで集中してみることができたと思う。巡礼がアート鑑賞にこんなに影響するのが、可笑しかったし、こうやって自分の感性を変えてくれた巡礼に感謝した。
 
プラド美術館を2時間半以上かけてゆっくりと見てから、宿に向かった。今回滞在中お世話になるのは、巡礼中と同じくたくさんの人と相部屋を共有するタイプのユースホステルだ。神経質な人には理解できないかもしれないが、こんな生活にももう慣れたものだ。ここは美術館からも近く、繁華街へも歩いていけるので非常に便利な場所だった。細長いビル一本が全てユースホステルになっており、リビングにキッチン、ランドリールーム、そして中庭もあった。この四方を壁に囲まれた中庭が心地よくて、よく夕方はビールを飲みながらのんびりと過ごした。就寝室も淡い薄紫の壁に、白いきれいなベッドで(今回は布団もあるから寝袋は不要!)、マドリッドの暑さから解放してくれる空調も整っていてかなり快適な空間だった。
 
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しばらくの間わたしの暮らしの拠点となるここはまずまず。楽しいマドリッドライフが始まる予感がした。
 

費用!【スペイン巡礼】カミーノ・デ・サンティアゴ

カミーノ・デ・サンティアゴ

 

番外編です 。

 

ブログにコメントや質問の多かった、費用について書きます。

費用については、様々なサイトやブログで事前にリサーチしました。一体いくら用意したらいいのか。

 

すると、大体どのサイトにも15~30万円くらい(宿や食事の贅沢具合で変わる)、と書かれていました。ふむ。贅沢度合いで旅費が倍になるのか、とますますいくら用意していいのかわからなくなりました。(笑)

 

結局、用意したのは20万円。

そして、約一ヶ月間歩いて使ったのは、約17万円でした。

 

 

内訳はこちらです↓

 

 

飛行機代(往復)・・・6万円

現地での移動費・・・2万円

宿代(36日分)・・・3.6万円

食費(36日分)・・・4.5万円

観光・・・0.5万円

その他・・・0.5万円

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計:17.1万円

 

東京で暮らすよりも安価という結果に!

 

 

 

詳しく解説していきます。

 

【飛行機代】

 たまたま(?)フライトが安価だったスペインのマドリッド経由で行きました。フランスからサンジャンピエドポーに行くルートもありますが、フランス国内の電車での移動費が高いと聞いていたのでスペイン経由にしました。サンジャンまでのバス移動は長旅でしたが、とても安くすみましたし、特にスリや危険な目には会いませんでした。

 

【宿代】

 公営のアルベルゲを中心に選んで宿泊していました。5~8ユーロくらいのところか、あとは寄付のところも多く泊まっていました。10ユーロ以上かかった宿は殆ど泊まっていませんので、こちらも費用は抑えられています。

 

【食費】

 これもいくつか理由があってこれくらいの費用に抑えられています。

 まず、わたし自身がかなり少食な方で、フルーツやビスケットなどのお菓子を一食分として食べていたことがひとつ。

 次にスーパーがあるときはパンとハムと葉物野菜を買って、簡単ボカディージョ(サンドイッチ)が定番でした。他にも大きな街のスーパーでは、日本のように1食分のサラダやお肉のお惣菜などがあるので助かりました。

 そしてもう一つ大きな理由が、キッチンで団体グループのそばにいるとかならず何かもらえたこと!(笑)特におこぼれが欲しくて側にいたわけではなかったけど、たまたまテーブルで休んでいると団体が大鍋で何か料理を作りはじめ、そのうちに「おまえは日本人か?一緒に食べるか?」と言われ、巻き込まれるパターンが多かった。なので、ペリグリノメニューは2、3回しか食べていません。

わたしが最も楽しみにしていた毎朝のカフェコンレチェ(入れ立てのカフェラテ)と歩き終わったあとのビールは欠かしませんでした!それだけで満足!

 

【観光】

歩くこと自体が目的だったので、観光といえることは 大きな街でカテドラルに入るくらいでした。巡礼者割引もあったので、利用していました。巡礼者の格好をしていると、自動的に値引きしてもらえてましたね。

 

 

美しい景色を見ながら歩き、人生について考え、ご褒美ビールが1ユーロで飲める!カミーノはわたしが今まで経験した中でも最もシンプルで贅沢な旅の経験でした。お金に換算してこれ以上の価値はつけられません。

 

 

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【スペイン巡礼まとめ】フランス人の道 32日間の記録

32日間の巡礼の旅をまとめました。どの道も、どの村も、どの街もひとつひとつ忘れることができないほど、それぞれの思い出が詰まっています。ぜひ、いろんな方に巡礼を体験してほしいと思いました。Buen Camino!

 

【1日目】スペイン巡礼 〜Roncesvalle - スペイン巡礼 フランス人の道 2017

【2日目】スペイン巡礼 〜Zubiri - スペイン巡礼 フランス人の道 2017

【3日目】スペイン巡礼 〜Pumplona - スペイン巡礼 フランス人の道 2017

【4日目】スペイン巡礼 〜Puente la Reina - スペイン巡礼 フランス人の道 2017

【5日目】スペイン巡礼 〜Estella - スペイン巡礼 フランス人の道 2017

【6日目】スペイン巡礼〜Sansol - スペイン巡礼 フランス人の道 2017

【7日目】スペイン巡礼〜Logrono - スペイン巡礼 フランス人の道 2017

【8日目】スペイン巡礼〜Najera - スペイン巡礼 フランス人の道 2017

【9日目】スペイン巡礼〜Granon - スペイン巡礼 フランス人の道 2017

【10日目】スペイン巡礼 〜Villafranca - スペイン巡礼 フランス人の道 2017

【11日目】スペイン巡礼 〜Obanaja - スペイン巡礼 フランス人の道 2017

【12日目】スペイン巡礼〜Tarajados - スペイン巡礼 フランス人の道 2017

【13日目】スペイン巡礼 〜Castrojeriz - スペイン巡礼 フランス人の道 2017

【14日目】スペイン巡礼 〜Fromista - スペイン巡礼 フランス人の道 2017

【15日目】スペイン巡礼 〜Carrion - スペイン巡礼 フランス人の道 2017

【16日目】スペイン巡礼 〜Moratinos - スペイン巡礼 フランス人の道 2017

【17日目】スペイン巡礼 〜El Burgo Ranero - スペイン巡礼 フランス人の道 2017

【18日目】スペイン巡礼 〜Mansilla - スペイン巡礼 フランス人の道 2017

【19日目】スペイン巡礼 〜Leon - スペイン巡礼 フランス人の道 2017

【20日目】スペイン巡礼 〜Saint Martin - スペイン巡礼 フランス人の道 2017

【21日目】スペイン巡礼 〜Astorga - スペイン巡礼 フランス人の道 2017

【22日目】スペイン巡礼 〜Foncebadon - スペイン巡礼 フランス人の道 2017

【23日目】スペイン巡礼 〜Ponferrada - スペイン巡礼 フランス人の道 2017

【24日目】スペイン巡礼 〜Villafranca del Bierzo - スペイン巡礼 フランス人の道 2017

【25日目】スペイン巡礼 〜O Cebreiro - スペイン巡礼 フランス人の道 2017

【26日目】スペイン巡礼 〜Triacastela - スペイン巡礼 フランス人の道 2017

【27日目】スペイン巡礼 〜Vilei - スペイン巡礼 フランス人の道 2017

【28日目】スペイン巡礼 〜Portomarin - スペイン巡礼 フランス人の道 2017

【29日目】スペイン巡礼 〜Palas De Rei - スペイン巡礼 フランス人の道 2017

【30日目】スペイン巡礼 〜Arzua - スペイン巡礼 フランス人の道 2017

【32日目】スペイン巡礼 〜Santiago de Compostela - スペイン巡礼 フランス人の道 2017

【番外編1】スペイン巡礼〜Fisterra - スペイン巡礼 フランス人の道 2017

【番外編2】スペイン巡礼〜Muxia - スペイン巡礼 フランス人の道 2017

 

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【番外編2】スペイン巡礼〜Muxia

朝、寝坊しようとしたのに、結局早起きしてしまうのは、32日間4時起きした癖が抜けないからかな。ここは巡礼の終着地点、フィステーラ岬だ。先を急ぐものはいない。

 
1階へ降りていくと、何人かが朝食をとっていた。朝食は寄付制で、トーストやフルーツ、コーヒーなどが置いてある。みんなどことなくゆったりと、ゆっくりと頂いている。今朝は少し曇り空で肌寒い。ストールを羽織って、散歩に出てみる。山の中腹にあるこの宿の周りは坂道に民家が点在している。宿のダイニングに飾られた大きな地図を見る限り、丘を越えるとビーチがあるようだ。いってみよう。
 
まるで夏休みに訪れた孤島のように、海岸に続く道には誰も歩いていなくて、まだ海は見えないのに潮風を感じる。時間が静かにゆったりと流れていて、まだ巡礼の余韻から冷めない心と疲れた身体にこの静けさが染み渡った。
 
丘を登り、下っていくと、目の前にビーチと海が現れた。整備された長いボードウォークもあり砂浜は歩きやすく、砂地に咲いた乾いた植物や花がきれいだった。真っ青な海からは絶え間なく荒々しい波が打ち付け、ビーチには誰一人いなかった。本当に静かなビーチだ。砂浜に腰を下ろして、しばらく海を眺めていた。
 
寂しいビーチが好き。今まで訪れた数々のビーチの中でもここは格別だった。「世界はわたしだけのもの。」巡礼中に幾度となく味わった、わたしだけの世界がここフィステーラにもあった。視界に入る景色の中に人間はわたしたった一人、あとは自然だけ。日本にいたらなかなか作り出すことができない瞬間だからこそ、大切に味わいたい 瞬間だった。
 
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しばらくぼーっと海を眺めていると、大きなハスキーが走ってきた。その後ろに若い男性が続いてあるいてきた。ランニング途中なのか、スポーツウェアを羽織り、耳にイアホンがみえた。男性と犬は、わたしの存在に気付いたか否か、そのままビーチへと歩いていった。二人の姿が小さくなるにつれて、霞んでみえた。強い潮風のせいか。こんな静かなビーチを毎日ランニングコースとして走れるのかと思うと、羨ましかった。
 
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バスの時間が迫っていたので、ビーチをあとにした。1日滞在しただけなのに、とても愛着が湧いてしまったアルベルゲにもお別れを言い、最初に降り立ったバス停に向かった。山を降りていくと、そこには昨日降り立った観光地のフィステーラの町があった。巡礼者や観光客がバスを待っていて、混雑していた。現実に引き戻される。こんなにも雰囲気が違う場所が同じ地域にあるのが不思議だった。
 
時間通りにバスに乗り込み、今日はMuxia(ムシア)に向かう。ムシアは海沿いの小さな町で、行ってみたい町の一つだった。この辺りの海岸は入り組んでいて、バスはその海岸沿いを地形に沿って進む。40分ほどでムシアの町についた。
 
ついたバス停は、また海沿いの小さなレストランが並ぶこれまた小さなマリーナにあった。小雨が降っていて、薄暗かったせいか、とても寂しい港町にみえた。まずは予約していた宿を目指す。ここも少し高台にあり、美しい夕日が見られると有名な場所だった。こんな天気じゃ、今夜は夕日は諦めるしかなさそうだ。
 
住宅街にある宿に到着したのはまだお昼を過ぎたころだった。少し早いがチェックインできるか聞いてみると、管理人はまだ掃除中だった。「まだ少しかかるけど・・」と掃除の手を止めて、受付に対応してくれた。温かみのある木製のキッチンと、まるで住み慣れた実家の様な感覚に陥るふかふかのソファーがあるリビング、そして寝室の壁はきれいな鮮やかな水色に塗られ、真新しい白い二段ベッドが数台並んでいた。こんな洋風な家には住んだことはないが、まるで家に帰ってきたような落ち着く空間だった。一瞬にしてこの宿のファンになってしまった。こんな宿をわたしも運営してみたい、そんな夢が広がる素敵な場所だった。
 
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バルコニーに出ると、目の前には黒い海が広がっていた。湿った潮風が顔に当たり、海の匂いをいっぱいに吸い込んだ。晴れていればきっと素晴らしい景色だっただろうけど、この黒く寂しい海は嫌いではなかった。カモメの鳴き声が、寂しさを増幅させた。
 
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雨がやんだので、散歩に出かけることにした。時間はたっぷりとある。が、宿で地図をみる限り、この半島は1時間程度で回れてしまいそうだった。海沿いを歩いていくと、巡礼のシンボル、ホタテマークのある石碑があった。山を越え、丘を越え、内陸部をひたすらと進むフランス人の道を歩いてきたので、この石碑が海沿いに立っているのは不思議な感じがした。
 
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堤防にはリアルな脱ぎっぱなしのコンバースを模したオブジェが。文字通り、脱ぎ捨てられているが、素材は硬いコンクリートのようだった。ビーチはなく、ゴツゴツとした黒い岩の磯が続く。岬の先に出ると、また石の大きなオブジェがあり、その先に教会もあった。天気が悪いので、どの景色を切り取っても暗く、寂しい印象だった。
 
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教会の裏の丘に登っていみる。頂上には大きな十字架があり、その先からムシアの町を見渡すことができた。オレンジ色の屋根が並ぶ、小さな小さな町だった。

 

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ヨーロッパのはしっこの、絵本に出てくるみたいに小さな港町の、小さな丘の上に立って、曇天を仰ぐ。ついに、行くところがなくなってしまった。今夜ムシアでの一晩を過ごしたら、明日行くべき場所がもうない。完全に、この旅が終わりを迎える。ずいぶんと遠くまできてしまったけど、ここからまた新しい旅に向かって準備を進めよう。

 

 

 

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【番外編1】スペイン巡礼〜Fisterra

カミーノ・デ・サンティアゴの巡礼を終えた翌日、例に習いフィステーラ岬へ行くことにした。巡礼を終えた者はサンティアゴからさらに2、3日かけて歩き、スペインの西の果てのフィステーラの町へ行くことは、巡礼本や、映画でも通例となっている。私の旅欲は完全に近いほど失くなってしまったため、”歩く”という選択肢はほぼなかった。そんな人のために、フィステーラへの直通バスが1日に数本出ており、日帰りでも行くことが可能だ。カテドラルのある旧市街から歩いて15分ほどで、バスターミナルへ到着した。
 
窓口でチケットを買い、指定された番号の乗り場へ行くと、既に巡礼者たちが列をなしていた。バスは案の定満席。私は巡礼を終えたその日に町のブティックへ行き、新しい靴とワンピース、それに麦わら帽子まで調達していた。もはやリゾートへの小旅行気分だ。そんなリゾートチックな装いの者は私だけで、皆巡礼中と同じようにTシャツに短パン、バックパックを背負っていた。
 
フィステーラまでは約1時間半。サンティアゴを出発するとすぐにのどかな風景の田舎道に入り、フィステーラ岬を歩いて目指す巡礼者たちが道沿いを歩いていた。私の気持ちとしては、”バスを選んで正解”というのが本音だった。それくらい、巡礼はすでに”終わった”ことだった。目標を達成してしまった今、次の目標を何に設定しようか、移り変わる車窓を眺めながらそんなことをぼんやりと考えていた。
 
あっという間にフィステーラの町についた。バスはヨットや小型の白い船がいくつも碇泊している、小さなマリーナのすぐそばの停留所に泊まった。
 
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マリーナを囲むようにシーフードレストランが立ち並び、そこは文字通りヨーロッパの小さなリゾート町だった。どのお店も店先にテーブルと椅子が並ぶテラス席があり、青空のもとキラキラした海を眺めながら優雅にシーフードと白ワインを楽しんでいた。こじんまりとしたとても雰囲気の良いマリーナだった。
 
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マリーナのすぐそばには小さなビーチもあり、白い砂浜にびっくりするぐらいエメラルドグリーンの海が広がっていた。地元の子供たち数人と、少しの観光客がのんびりと砂浜に座り、海を眺めていた。本当に時がゆっくりと流れているような、そんな景色だった。
 
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さぁ、宿に向かおう。あらかじめBooking.comで予約していた宿は少し山を登ったところにある。海からは少し離れるが、ネットで見たその宿はとても雰囲気がよさそうだった。賑やかなマリーナを離れ裏通りに入ると洗練された観光地とはうって変わり、閑散としていて質素な建物が並ぶ住宅街だった。コンクリートの壁にはヒビが入り、木製のドアは長年の塩害からか完全に朽ちていた。しかしまったく暗く寂しい雰囲気ではなく、通りは明るくそして人が暮らしているとう安心に近い印象だった。通りには全く人気はないが、開いた窓の中からテレビの音が漏れていたり、そんなのんびりとした時間が流れている。
 
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宿は思っていたよりも、山の上の方にあった。地図もあいまいで、歩いても歩いてもみつからない。”Mar de Fora"という地名だけが頼りだった。どんどんと海から離れ、眺めがよくなっていく。空は澄み切って青く、日差しを全身に浴びながら山を登っていく。やっと見つけた宿は、住宅街の真ん中にあった。管理人さんは土足の室内を裸足で歩いていて、海の近くに住む人という感じがした。今までお世話になってきたAlberugueの管理人たちとは明らかに違っていて、それはそれでのんびりとした安心感があった。一応Albergueなので、クレデンシャルにはスタンプを押してくれた。
 
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宿は二階建ての一軒家のようで、二階の部屋に案内された。空いていたので、二段ベッドの下段にしてくれた。久しぶりだ。フィステーラ岬へは夕焼けを見に行く予定だった。宿に戻るのが遅くなりそうだが、何時までに戻ればよういかと管理人に聞くと、なんと宿は施錠しないので何時に戻ってもよいとのこと。今夜の日の入りは夜10時なので、20時頃に出ていけば十分に間に合うと教えてくれた。スーパーでワインとパンとサラミを買い、19時頃に出かけた。今夜は岬でピクニックだ。
 
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岬へは歩いて30分ほどかかるが、車道沿いの一本道なのでみんなそぞろ歩きで岬を目指す。途中、巡礼者の銅像などもあった。
 
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岬に着くと、観光バスの駐車スペースなどもあり、完全なる観光地だった。まだ人は少なかったが、見晴のよい芝生スペースや、テーブルと椅子のあるピクニックスペースは結構埋まりつつだった。とりあえず、灯台のある岬まで行ってみることにした。灯台の横を通り過ぎようとしたとき、ホタテマークの石碑があった。そこには、「0km」とある。一ヶ月以上前に、800kmからスタートしたこの旅の終着地点を意味していた。ずっと追いかけてきた、ホタテのマークが、ついにこの最後の一つで完全に終わった。その石碑が私にとってはとても重要な、終わりを証明してくれるものであることは間違いなかった。
 
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 ゴツゴツとした岩場まで出た。目の前には、まさに”スペインの西の果て”、真っ青な大西洋が広がっていた。海からの風で、ワンピースの裾が広がった。ついに、ここに来たんだ。なんだか、サンティアゴに着いたときよりも、よっぽど達成感があった。青い海と、青い空と、海から吹き上げる風が私に清々しい気持ちを与えてくれた。ついに終わったんだ・・・。
 
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 岩場の下の方に、巡礼者たちが自らが身につけていた服や持ち物を燃やしたと言われるスペースがあった。今は危ないので火気厳禁だが、誰かが燃やしたであろう炭の後が残っていた。
 
できるだけ平らなスペースを探し、腰を下ろした。白ワインとサラミで祝杯をあげた。あたりはまだまだ明るかったが、風が吹き、少し肌寒かった。2時間後、まわりにはいつの間にかたくさんの人たちが腰を下ろしていて、岩場が人で埋まっていた。 真っ白な太陽が今日の役目を終えて、静かに地平線の向こうに沈んでいった。みんな、それぞれの気持ちで夕日を見つめていた。家族みんなで見つめる人、恋人と見つめる人、そして一人で見つめる人。いつまでもいつまでも、見つめていた。それぞれの明日を見つめていた。
 
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【32日目】スペイン巡礼 〜Santiago de Compostela

カミーノ・デ・サンティアゴ

2017/07/05
スペイン巡礼32日目
 
朝4時に目が醒める。支度をして、キッチンに置いてあった”ご自由に”のドーナッツを2個頬張って出発した。さぁ、今日は巡礼最後の日。いつもと同じ1日の始まりなのに、なんだか胸が高鳴る。
 
辺りは暗かったが、町の通りは街灯を頼りに地図を見ながら進む。まだ車の通りもほとんどなく、町全体が静まり返っていた。町を抜けると昨日一度通った森に入った。本当に真っ暗だった。そうだ、今朝は月が出ていない。今までは月明かりに照らされた植物がうっすらと見えたが、今日に限ってはそれさえもない。風も吹いていないので、葉音もなく、森は静まり返っていた。気味が悪いほどに。大きな木に囲まれた森の中の一本道をゆく。ヘッドライトで照らされる範囲の外は真っ暗で、側に木が立っていることさえも見えない。初めて、森が怖い、と感じた。今まではどんなに朝早く出て山の中を一人で歩いても全くそんなことは感じなかったのに、この異様な静けさの中をたった一人で歩くのが恐ろしかった。そしてその時突然に、道の先に白い光の玉が現れた!!!驚きと恐怖と緊張で、身動きが取れず、全身から汗が噴き出した。
 
そしてその光の玉は、俊敏に上下に動き、ぱっと消えた。「え?!なに?!」混乱と恐怖で、動けなかった。咄嗟に逃げようと、後ろを振り返った。すると、後ろにも遠くに白い玉が見えた。一つではなく、二つだ。「ん???」自分の頭のライトで照らされた先をよーく見ると、あちらも頭にヘッドライトをつけた人間だった。「なーんだ・・・」おそらくさっき見たのも、ヘッドライトをつけた巡礼者だったのだ。かなり遠くを歩いていたので、私のライトでも照らしきれず、向こうの頭のライトだけが見えたのだ。お互いに前だけ向いて歩いているので、気づかないのだ。
 
そんな恐怖体験をしつつ、ものすごい早歩きで進む。山を登るのも猛スピードだ。まるでトレイルラン。山の上には空港があり、滑走路の横を通る。小さな集落もいくつか通りすぎ、徐々に巡礼者たちも増えてきた。今朝は朝ごはんもパスして、ひたすらにサンティアゴを目指す。カフェ、ゴルフ場、郊外の住宅地、学校、教会など、色々通りすぎたが、一瞬も休憩しなかった。
 
そしてついにサンティアゴ手前5km地点の、Monte Gozaの山の頂上にきた。ここには大型のAlbergueがあると聞いていたが、本当に大型だった。いくつもの棟が広大な敷地の山の斜面に建てられていて、まるで収容所のよう。どこが受付なのかもさっぱりわからない。この丘から、サンティアゴの町が遠くに見えた。もう少しだ。
 
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丘を下るといよいよ、車通りの激しい街中に入った。巡礼者たちの置き土産(というかもはやゴミ溜め)で飾られた、”Santiago de Compostela”の巨大看板が出迎えてくれた。ここまで頑張って歩いてきて、いらなくなったカッパをこうやって捨てて汚していくなってどんな失礼な神経をしているんだろうか?と思ってしまうのは、日本人だからだろうか。
 
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街中にもしっかりと「Camino de Santiago」の看板があって、安心する。これで迷うことがない。それにしても、もう少しでこの看板を追い続ける日々が終わる のかと思うと少し寂しい。
 
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旧市街に入るまではわりと近代的な建物が並ぶ。アパートなどの背の高い建物が多いが、そのビル間のちょっとしたスペースで共同菜園などがあり不思議な町である。
 
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そして旧市街に入り、石造りの建物を横目に少し迷いながらも、その建物を目指す。
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そしてついに、Santiago de Compostelaに辿り着いた。
 
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2017年7月5日 9:07a.m. ついに辿り着いた。800kmの道のりを、32日間かけて歩いてきた。
 
 
巡礼を歩いた多くの方が言うように、この場所に辿り着いたことに対する溢れ出るような感動は特にない。なぜならこの歩いてきた道の途中で見てきたこと、経験したこと、考えたことの方があまりにも自分にとっては重要で、十分に心を動かされたからだ。単純にこの場所にたどり着くことが巡礼なのではなく、800kmという道中で自分が何を得るかということが巡礼の本意なのだと改めて思い知った。
 
この広場にたどり着く直前に、巡礼を始めた頃に何度か出会った女の子とすれ違った。ウクレレを持って巡礼をしていて、よく宿で弾いて歌ってくれていたっけ。そんな彼女がカテドラルのある広場から引き返してくるときの表情が今でも忘れられない。帽子を深くかぶって、そこから見えた表情は硬く強張っていた。彼女は800kmを歩いて、何が見えたのかな。どうか、あの歌っていたころの、明るくて楽しい気持ちと笑顔を忘れないでいてほしい。いずれにせよ、何かを得たことは間違いない。巡礼は私たちを手ぶらでは返してくれないのだ。
 
それにしても、カテドラルは見事に青い布でカバーされていた。工事中なのは知っていたが、2、3年前からこの姿で、あと10年くらいは修復に時間がかかるとのこと。なんだか煮え切らないが、仕方がない。巡礼証明書をもらいに行くことにした。
 
 
事前にネットで調べていたので、巡礼オフィスはすぐにわかった。広場を抜け、階段を下りて右に曲がるとすぐだ。巡礼者でごった返していると思いきや、まだ時間が早かったので2、3人が並んでいるだけだった。順番を待ち、カウンターでクレデンシャル(スタンプ帳)を提出すると、受付の女性がさらっとさらっとチェックし(スタート地点と、昨日泊まった宿しかみていない気がする)、巡礼証明書と距離証明書をとても可愛らしいフォントで手書きでこれまたさらっと書いてくれた。受付カウンターの横にはお土産もの屋があり、そこで賞状を入れるような筒が2ユーロで買えるので、それに入れて持ち帰ることにした。
 
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次に向かったのは、大聖堂でのミサだ。 1日に数千人の人たちがここサンティアゴに辿りつくだけあって、数回行われるミサのどの回もものすごい人数だった。席は数百人分用意されているが、開始15分前にはほぼ全ての椅子が埋まり、立っている人も数百人はいただろう。開始前は大聖堂内は薄暗いのだが、ミサが始まると黄金の祭壇に照明が当たり、かなり明るくなる。演台に立つ人が「サイレンシコ(静粛に)」と何度も通達するも、これだけの数の人がいるとなかなか静かにならない。演説はスペイン語と英語で交互に通訳されながら進む。巡礼中に何度もミサを受けたので要領はわかっているが、説教も長いので時間がかかる。どうやって選ばれたのかはわからないが、巡礼者の中から選ばれた数人が前に出て、名前と、どこの国から来たのかと、どこの町から出発したのかを一人ずつ述べていく。最後はお決まりの、周りの席の人たちと握手をして、ここで出会えたことに感謝して終わり。なんてことはない、ただの儀式だ。そう、想像してはいたが、こんな感じであっけなく、サンティアゴの巡礼が終わってしまった。
 
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思えば朝4時過ぎに出発し、朝9時にはサンティアゴに着いた。ということは、4時間ちょっとで20kmを歩いたことになる。今までで最速だ。最後までせっかちだったな。朝ごはんも食べずに来たが、ピルグリムメニューを食べるほどお腹が空いていなかったので、小さなバルに入りスープとクロケッタとビールで休憩した。さて、これからどうしようか。散歩でもしようか。サンティアゴの旧市街は通りも石畳で、建物も古く、中世のヨーロッパの街並みのイメージ。スーベニアショップとレストランが星の数ほどあり、常に通りは賑わっている。大聖堂の目の前の広場には団体の巡礼者の歓声が響き、記念の撮影をしている。少し離れたところで、単独の巡礼者が静かに大聖堂を見上げている。みんなそれぞれの想いを噛み締めているのだと思う。このサンティアゴの街は数百年もの間、毎日新しい巡礼者たちを迎えてきた。来るもの拒まず、そしてこの巡礼を成し遂げた人たちの新しい門出を祝い、新しい人生へと送り出している。
 
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午後3時を回ると、早速ホテルにチェックインをした。巡礼を終えた記念の自分へのご褒美で、今夜はホテルを予約していた。大聖堂のすぐ近くの、五つ星ホテルだ。石造りの外観だが、内装はモダンに改装されていてとても歴史のある建物とは思えないほど。部屋には大きくて広いベッド!そしてここのホテルに決めたのはなんといっても、バスタブがあるからだ。暑いお湯を張り、約一ヶ月ぶりに湯船に浸かることができた。24時間食べ放題の軽食つきで、トーストやフルーツ、コーヒーがいつでも飲めた。
 
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夕食は一人で祝杯を挙げに、バーホッピングに出かけた。どのお店も魅力的で、店先で客引きする店員も親切なのでかなり迷ったが、その中でも外観が素敵で、店内もレトロで雰囲気のあるところを選んだ。カウンターのショウケースに並ぶ、海産物や野菜の料理はどれもこれも美味しそうで、色も鮮やかで照明に照らされてまるで宝石のようだ。欲しいものを選ぶと、その都度温めたり、焼いたりして調理してくれる。食べたことがないくらい弾力のある食感のエビや、パン粉をのせてちょっと焼いた貝がどれもこれも美味しい。接客も丁寧で、本当に気持ちが良い。巡礼を成し遂げた夜に、思い切りスペインらしい観光を楽しんだ。
 
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さぁ、これで私の32日間の巡礼の旅は終わってしまった。次はどこへ向かおうか。まだまだスペインの旅は終わらない。
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【31日目】スペイン巡礼 〜Pedrouzo

カミーノ・デ・サンティアゴ

2017/07/04
スペイン巡礼31日目
 
エアコンの効いた快適な部屋でぐっすり眠り、朝目覚めた。カーテンで仕切られた小さな小部屋に私一人なので、堂々と着替えられる。準備をして宿を出る。つもりが、あれ?ドアの鉄格子が開かない。ショック・・・。ここも、管理人が外から鍵を開けるまで、ドアが開かないようだ。仕方がないので、オープンを待つ。ソファーがいくつもあるので、せっかく履いた靴をまた脱ぎ、くつろいだ。
 
6時過ぎにやっと管理人が来て、ドアを開けてくれた。待ちわびた巡礼者たちが、ぞろぞろと宿を出た。もう日の出が近い時間だ。少し急ぎ足になる。町中の道路沿いをしばらく歩き、家々がまばらになったころ日の出を迎えた。今日も真っ赤な朝日に照らされる。眩しさで少し目がくらみ、また目を開くと一瞬で世界が夜から朝に変わっていた。1日のはじまりだ。
 
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予定では、明日サンティアゴに着く予定だ。サンティアゴから5kmほど手前のMonte Gozoの大型のアルベルゲに泊まる人が多いようだが、さすがに1日ではそこまでは行けそうもないので、20km手前のPedrouzoを目指すことにした。
 
わりと平坦な道に小さな集落がいくつもあり、どの村も丁寧に整えられた庭先が綺麗でイングリッシュガーデンのようだった。(スペインだけど。)プチホテルもあり、こんなところに泊まって、午後はゆっくり庭で本を読むのもいいなぁと想像を膨らませながら歩いた。どの村にもその村の個性があって、眺めているだけでも楽しい。距離に追われることなく、のんびりを歩けるのが幸せだ。カミーノに来た目的も、もともとはスペインの美しい景色や村々を見てみたいというのがあった。それをまた今日も達成しながら歩いてる。
 
(あまりにものんびりと歩き過ぎて、写真がないのが残念。)
 
朝ごはんを食べる場所を探すも、なかなかない。途中、小さな集落にカフェを発見したが、水はけがよくなく、庭も苔むしていたのでスルー。だがここの庭先の石の兵には、無数のビール瓶が並べて、いや、放置されていた。不思議な光景。
 
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やっとまともに朝ごはんを食べられそうなカフェを発見。テラスがあり、テラスの向こうには綺麗に剪定された広い農地が広がっていた。たくさんの巡礼者たちがのんびり朝のカフェタイム。私はお腹がすいていたので、たっぷりお砂糖を入れたカフェコンレチェとポカディージョ(サンドイッチ)を。そういえばスペインに来てから、カフェラテに砂糖を入れるようになった。最初は抵抗があったけど、あまりにも歩き疲れている時は、やっぱり身体が糖分を欲しているようだった。あまいあまーいカフェコンレチェをいただくと、回復するよう。そんなわけで、カフェラテに砂糖を入れる派です。
 
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いよいよ太陽が頭のてっぺんに近づき、歩くのが厳しくなってきた。森を通るルートが多いので比較的日陰があるが、アスファルトの照り返しで体力が奪われ、足も限界だった。そんなとき、顔馴染みの巡礼者たちにあった。ポルトガル人とイギリス人とフランス人のグループだ。しばらく話が盛り上がって歩いていると、なんと目的地の町を通り越し、森を一つ抜けていた。地図を見返すも、次の町が遠すぎたのでしぶしぶ来た道を戻ることに。往復の距離を歩き疲れ果てたので、みんなでちょっと贅沢をして私営のアルベルゲに泊まることにした。選んだお宿は広くて清潔で、そしてなんとお風呂にダブルヘッドシャワーもある!みんなで盛り上がり「サイコー!」と言いながらシャワーを浴びて、ご飯を食べに出かけた。
 
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宿の人にオススメのレストランを聞いて、その店に行くことに。こういうときにスペイン語の話せる人がいると便利だ。評判の店らしく、地元のスペイン人もたくさんランチをしていた。サラダに、ミートボールスパゲティに、ワイン。デザートに初めてガリシアケーキという、少し粉っぽいパウンドケーキもいただいた。昼間から盛り上がりだいぶ飲んだけど、楽しい宴だった。
 
 
みんなで、巡礼を終えてそれぞれの故郷に帰ったら何をするかについて話あった。
 
ポルトガル人の男性は親が弁護士で自分はボンボンだという。親のお金でマンチェスターに留学中で、留学先で出会ったのがイギリス人の友人というわけだ。この友人の若いイギリス人男性は、赤毛で肌が白く独特な目つきをしていて、見るからにマンチェスター出身とわかる。家族に「卒業旅行に、巡礼に行ってくる」と伝えたところ、「日焼け止めを持っていけ」と一言言われたそうだ。ウィットに富んた的確なアドバイス
ふたりともまだ大学生。イギリスに帰ったら大学を卒業するが、とりあえずはまだ何の仕事に就くかは決めていないとのこと。日本だったら卒業する1年以上も前から就活に励むのに、なんとものんびりしたもんだ。
 
もう一人のフランス人の女性は、一人で巡礼に来ていたが途中でこのボーイズに出会い、面白かったので一緒に歩いてきたという。年齢は39歳で、先日Portmarinで誕生日を迎えたそう。彼女も不思議な経歴で、なんとインドに住んでいて、巡礼を終えたらインドの自宅に帰るそうだ。大きな一軒家に友人とふたりで住んで、フリーランスで仕事をしているという。なんとも個性的なメンバー。
 
さて、私はというと、急に巡礼を思い立って会社を辞め、たくさんのブログを読み込んでつけた知識だけを頼りに、バックパック一個でスペインにきた。そして30日間の夢のような冒険を明日終えようとしている。日本に帰った後のことなんて、なんにも考えていない。
 
そんななんの目標もないわたしのために、みんなが今後のプランを考えてくれるという。フランス人の女性に、「あなたはなにが好きなの?」と聞かれ、しばらく考えたあとに、「旅だ」と答えた。すると「じゃあ、トラベルジャーナリストなんてどう?あなたは旅行が好きだし、英語もしゃべれるし、これで決まりね!」と。なんともシンプルなアイディアにあ然としてしまう。「でも、英語だってそんなにしゃべれるわけじゃないし、そんな仕事してる人なんて五万といるし、お金になるかわからないし・・・。」と出来ない理由ばかり並べる私に対し、みんなは「そうだ!それがいいよ!」「旅をしながら、旅雑誌に投稿したらいいじゃない」と本気だ。
 
他人事だからってわけじゃなく、”それがいい”と疑いもなく言っていることに私はすごく驚いたし、関心した。出来るか出来ないかは問題でなく、ただ何の目標もない私に、”私がやったら最高に幸せになれると思われるプラン”を考えてくれたのだ。私を含め日本人の多くは、実現性の高いことを想像しがちで、それを選びがちになっている。不可能だなんて誰も言っていないし、それが実現するかどうかは本当に自分次第なのだ。自由な発想が乏しくなっている自分に少し失望したとともに、柔軟な発想で私の将来を想像してくれた3人に本当に感謝している。そうだ、まずは自分が何か好きかを改めて考えて、素直にそしてシンプルに考えてみよう。私のバックパックは断捨離してすっごくシンプルになんたけど、頭の中はまだまだ荷物が多そう。あと1日をかけて、もう少しそのことについて考えてみよう。また一つ、大切な仲間と、大切な思い出が増えた。